日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際伝播(でんぱ)集団は2日、日中両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。相手国への印象について「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた中国人は前年比24・8ポイント増の87・7%で、対日感情が急激に悪化した。中国の印象が「良くない」とした日本人は同3・2ポイント減の89・0%だった。
理由は「尖閣巡る対立」トップ
中国人の「良くない」が9割近くに達したのは日本が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化した翌2013年以来。東京電力福島第1原発の処理水放出問題などを巡る対立を背景に、双方とも相手国への印象がここ20年で最低水準となった。
印象が良くない理由として、中国人では前年に続き「尖閣国有化を巡る対立」がトップに。今年は「一つの中国原則への消極的態度」や「中国侵略の歴史への謝罪・反省がないこと」、「日本メディアの中国の脅威の喧伝(けんでん)」が前年を上回った。
軒並み印象が悪化
日中関係についても中国人で軒並み印象が悪化した。現在の関係が「悪い」か「どちらかといえば悪い」と答えた中国人は同34・8ポイント増の76・0%。日本人は52・9%と同15・5ポイント減少した。
日中関係が今後は「悪くなる」「どちらかといえば悪くなる」と答えた中国人は同34・9ポイント増の75%。「自国にとって重要ではない」も「どちらかといえば」を含め59・6%に上り、同40・5ポイントの急増となった。中国人が「軍事的脅威を感じる国・地域」でも日本は米国に次ぐ2位だった。
関係の発展を妨げる問題として中国人が最も多く選んだのが「原発処理水の放出問題」(35・5%)で、前回より30ポイント近く増加。日本のナショナリズムや反中感情、歴史認識・教育を挙げる人も前年より増えた。
日中に「深刻な対話・交流不足」
ネット世論は民意を反映しているかには、中国人の約8割が「適切に反映している」と回答。来日経験者の間では対日感情が良かったといい、調査結果には、反日投稿もみられる交流サイト(SNS)などの間接情報に依存する人の増加が影響した可能性もある。
東京都内で会見した言論NPOの工藤泰志代表は「日中に深刻な対話・交流不足がある証拠。戦略的互恵関係の基盤が崩れ始めており、日中関係のあり方を真剣に議論すべきだ」。中国国際伝播集団の高岸明編集長は「中国のSNSが調査を偏らせたわけではない。過去1年の日本の政治家の発言やメディア報道など、一連の問題が影響した」と指摘した。
ロシアの侵略に批判も
一方、世界の紛争や緊張の原因について、中国人では「他国を侵略し核威嚇を行う国連安保理常任理事国を世界が止められないこと」が41%と1位。ロシアのウクライナ侵略にも「どんな理由であれ他国の領土主権侵略に反対すべきだ」が同25ポイント増の41・3%となった。対日感情の悪化とともに、ロシアの侵略にも批判的な結果となった。
調査は20回目。10~11月、日本側が全国で1千人、中国側が北京や上海など10都市で1500人から回答を得た。(桑村朋)