【北京=三塚聖平】トランプ米政権が中国への10%の追加関税発動を表明したことに対し、中国政府は、報復措置の示唆など強硬な態度を示すことを控えている。追加関税の影響を慎重に見極めるとともに、予測不能なトランプ大統領を過度に刺激することを避ける思惑がありそうだ。
香港メディアは1日、在米中国大使館の劉鵬宇(りゅうほうう)報道官が声明で「貿易戦争や関税戦争に勝者はいない」と追加関税に反対したと報じた。劉氏は「中米両国は対話と協議を通じて意見の不一致を解決すべきだ」とも指摘したという。
米国の追加関税発動の方針について、中国政府系の主要メディアは速報せず、沈黙を保った。反米世論が過度に高まることを警戒している可能性がある。
中国側は、トランプ氏が好むディール(取引)に持ち込み、米国との本格的な対立を回避したい意向とみられる。習近平国家主席は1月17日にトランプ氏と電話会談した際に、「中国と米国の経済・貿易関係の本質は互恵、ウィンウィンであり、対抗や衝突を選択すべきでない」と暗に追加関税にクギを刺したうえで、協力の重要性を強調した。
一方で、中国は貿易戦争が避けられない局面に至ることにも備えているようだ。昨年12月には相手国が国際条約や貿易協定に反して関税を引き上げた場合に報復関税を課せると規定した「関税法」を施行するなど、「報復カード」を整えているとの見方もある。