香港で19日、45人の民主活動家に一斉に量刑が言い渡された。罪となったのは民主主義に基づいて実施された予備選に関わったことで、香港国家安全維持法(国安法)による民主化運動の弾圧を象徴する判決だ。「愛国者治港(愛国者による香港統治)」を進める中国の習近平政権の狙い通りの幕引きとなった。
判決後に親指立て笑顔
「我愛香港(私は香港を愛している)。バイバイ!」。この日、法廷には45人の被告全員が出廷した。量刑の言い渡しが終わった後、著名な民主活動家で、禁錮4年8月の判決を受けた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(28)はこう叫んで、法廷を後にした。
黄氏は、国安法施行後も「中国の独裁政権に反対する」と公然と主張し続ける強硬派として知られた。予備選に出馬した民主活動家たちの中心的メンバーだった。
今回の裁判では刑の減軽などを図るため罪を認めたものの、他の被告のように情状酌量を求める文書を裁判所に提出することはなかった。
黄氏同様、予備選に出馬し、多くの市民から支持されたのが何桂藍氏(34)だ。ネットメディア「立場新聞」の元記者で、2019年の反香港政府・反中国共産党デモの最前線でネット中継を行い、若者たちから「立場姉ちゃん」と親しみを込めて呼ばれていた。
何氏は罪を認めず、法廷で起訴事実を争った。「香港人は、政権があらゆる面をコントロールする制度の下で生きることを望んでいない」などと主張、自らの情状酌量も求めなかった。
結果、この日の判決は禁錮7年という重刑となった。しかし何氏は言い渡しを受けた後、傍聴席に向かって親指を立てて笑顔を見せたという。
判決の影響、香港政府は考えるべき
香港では民主派が大量に検挙されて以降、選挙制度の見直しが進み、立法会選に民主派が出馬することさえ難しくなっている。愛国者、つまり香港よりも中国共産党を愛する親中派一色に染まってしまった観がある。
こうした中、量刑の言い渡しが行われた裁判所には19日朝、500人を超える市民が傍聴券を求めて詰めかけた。「法廷に入れなくても(45人を)応援する姿勢を示したい」と話す市民もいた。
民主派団体の元代表で、自身も無許可集会に参加した罪などで約1年半入獄した経験がある陳皓桓氏(28)は取材に対し、「今日の判決は予備選で投票した約61万人の市民に対する判決であり、市民への弾圧だ。判決の影響がどれだけ大きいのか香港政府は考えるべきだ」と語った。(藤本欣也)