アフガニスタンで実権を握るタリバン暫定政権が昨年来、中国に多数の行政官を送り込んでいることが28日、国連関係筋への取材で分かった。2021年夏、米国を後ろ盾とした共和政権が崩壊した後、国家運営を担うメンバーに実務経験を積ませるのが狙い。反米色を強めるタリバン政権の「中国傾斜」が鮮明となっている。
国連関係筋によれば、タリバンは昨年、600人の行政官を中国に派遣した。対象は主に、省庁の課長や局長クラス。今年の派遣は800人規模に上るという。
タリバン政権は第1次政権期(1996~2001年)とは異なり、比較的そつのない行政を全国規模で展開。中国で本格養成された〝エリート〟たちを今後、積極活用することで、復権から3年経った支配体制を盤石化させたい考えとみられる。
女性の人権抑圧に対する懸念から、国際社会は現在、タリバン政権を正統な政府とは認めていない。こうした中、同筋によれば、タリバンは今月初旬ごろ、中国に閣僚も派遣した。日本など西側諸国とアフガンとの間で〝閣僚外交〟が行われない中、「中国との関係深化を象徴する動き」(同筋)といえる。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」へのアフガン取り込みを加速させたい考え。アフガンには、石油や重要鉱物といった豊富な天然資源が眠っていると指摘され、今年夏には、中国国有企業が主導するアフガン史上最大規模の銅鉱山開発事業がスタートした。
中国はアフガンに隣接する新疆(しんきょう)ウイグル自治区への過激派流入を恐れており、治安対策でタリバンから協力を得たい思惑もある。
アフガン浸透を狙う中国は昨年9月、駐アフガン大使を派遣した。タリバンが実権を握って以降、外国の大使が任命されたのは初めてとなった。タリバン側もこれを受けて同年末、駐中国大使を派遣するなど交流が活発化している。(黒沢潤)