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香港メディアの萎縮不可避 立場新聞元編集長ら有罪 記者協会「報道の自由の重大な後退」

産経ニュース 2024年8月29日 17時25分

2020年に香港国家安全維持法(国安法)が施行され、言論の自由が制限されて以降、中国や香港政府を批判した香港メディアの報道を有罪とする司法判断が初めて示された。ネットメディア「立場新聞」の元編集長らに有罪判決が下された29日、香港記者協会は「香港における報道の自由の重大な後退だ」とする非難声明を発表した。

刑事罪行条例の「扇動出版物発行などの共謀罪」で有罪判決を受けたのは立場新聞の元編集長、鍾沛権(しょう・はいけん)氏ら2人。「言論の自由」に基づき無罪を主張した鍾氏らに対し、検察側は、香港の民主活動家へのインタビューや英国に亡命した活動家、羅冠聡氏が執筆した文章など17点の掲載記事を問題視。政府への敵意や憎悪を煽(あお)り、暴力や国家の安全への危害を招いたなどと主張した。裁判所はこのうち11点について「扇動の意図がある」と認定した。

立場新聞は14年に設立された。19年に相次いだ反政府デモの現場からネット中継を行い注目されたが、21年末、鍾氏らが逮捕され、運営停止に追い込まれた。

香港政府は今年3月、国安法を補完する「国家安全条例」を制定、統制を強化している。国家秘密の窃取やスパイ活動だけでなく、中国共産党や中国・香港政府への憎悪などを扇動する行為も禁止された。これまでの刑事罪行条例と比べると、最高刑は禁錮2年から7年に厳罰化され、6カ月だった起訴期限も無期限となった。メディアの萎縮が進むのは不可避だ。

鍾氏は判決後、裁判所に陳情書を提出し、その中で「事実通りに記録し報道することこそ、ジャーナリストの逃げることのできない責任だ」と訴え、香港メディアをも鼓舞した。

一方、香港警察の幹部は「国家の安全に影響を及ぼすときには言論の自由を制限できることが示された」などと判決を評価した。(藤本欣也)

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