台湾各地では25日から始まった旧正月(春節)の9連休を前に、「尾牙(ウェイヤー)」と呼ばれる忘年会の光景がみられた。その由来は、毎年暮れの旧暦12月16日に商家が開く身内の食事会だ。
伝統的な尾牙では店の主人が使用人たちをごちそうでもてなすが、辞めてほしい使用人の前に鶏料理の鶏の頭を向けて解雇をにおわす風習があった。「紅包(金一封)」をそっと渡して、これまでの労をねぎらうパターンもある。
某台湾メディアの尾牙に招かれたところ、そうした伝統とは無縁の無邪気なものだった。当たり前だが忘年会で社員に解雇を告げるなどという野暮(やぼ)はない。舞台では歌などの余興が演じられたが、目玉は紅包の抽選会だ。最高額は2万台湾元(約9万6千円)。当選した社員たちは満面の笑みでガッツポーズをきめ、周囲の円卓は歓声に包まれた。
ところで現代の尾牙でも紅包は幹部らのポケットマネーから拠出されることが多い。日台間で所得格差があった昔は、日本人駐在員が現地職員に紅包を出してもさほど懐は痛まなかったが、最近は人数が多い組織だと大変なようだ。
ある駐在幹部は、昨年の1人当たり名目国内総生産(GDP)で日本が台湾を下回り〝立場が逆転〟したことに触れ「時代は変わったんだけどなあ」とぼやいた。(西見由章)