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処理水放出開始1年 中国、日本産水産物の禁輸継続も関心低下 対日批判への同調も限定的

産経ニュース 2024年8月24日 11時58分

東京電力福島第1原発処理水の海洋放出開始から24日で1年となった。中国政府は処理水を「核汚染水」と呼び、日本産水産物の全面禁輸を続けているが、庶民の関心は放出開始直後と比べて低下しているのが現状だ。一度振り上げたこぶしの落としどころを、中国政府が見つけるのが難しくなっているという指摘もある。

海産物の街として知られる中国東北部に位置する遼寧省大連市。8月中旬に市内の市場を訪れると、客足が伸びないという週末の昼間にも関わらずにぎわいを見せていた。カニを売る店舗の男性店員は「どこの店も日本産は扱っていないし、大多数の人は既に核汚染水を忘れている」と冷静に話した。

昨年8月24日の処理水放出開始を受け、中国政府は「中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保する」として日本産水産物の輸入を全面的に停止した。中国メディアも「食品の汚染リスク」を強調し、中国の交流サイト(SNS)では清華大の研究チームが手掛けたという「核汚染水が放出開始から240日後に中国沿海に到着する」というシミュレーションも出回った。

中国の消費者が日本産に限らず海産物全体の安全性を警戒して「海鮮離れ」が広がった。そうした動きは一時と比べて下火になったといえる。ただ、完全には払拭できていない。大連の市場でも海鮮離れで売り上げが落ちたことで、「政府は他にやり方があったはずだ」と不満を吐露する水産業者がいた。

大連市内中心部にある日本料理店の女性従業員は「日本料理店の競争は激しくなっているし、回転ずし店には行列ができている。特に若者は核汚染水のことは気にしていない」と指摘する。この女性は「以前より売り上げは落ちているが、これは景気低迷でぜいたくを控えていることが要因だと思う」と指摘した。

処理水を巡る対日批判も国際社会で広がりを見せなかった。中国とロシアは5月の首脳共同声明で処理水を「核汚染水」と呼び懸念を表明したが、同調した国は北朝鮮、ベネズエラといった関係が深い国にとどまった。日中外交筋は「中国にとって、こうした状況になることは誤算だったはず。とはいえ簡単には主張を覆すことができず、どう着地点を見つけるのか苦慮しているのでは」との見方を示した。

日中間では処理水放出に関する協議がさまざまなレベルで行われているが、問題解消のめどはたっていない。(中国遼寧省大連 三塚聖平)

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