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「100年間遊泳禁止」のセーヌ川、競技実施できる? 浄化成功で「五輪の遺産」となるか

産経ニュース 2024年7月24日 14時21分

【パリ=板東和正】パリ夏季五輪の開会が26日に迫る中、水質汚染が懸念されるセーヌ川で競技が無事に行えるかが注目されている。フランス政府とパリ市は五輪のレガシー(遺産)として、大会後に1世紀にわたり禁止されていたセーヌ川の遊泳を全面的に解禁する方針で、巨額を投じて水質の改善計画を実施してきた。浄化は進んでいるが、水質は天候で左右される恐れもあり、依然として不安が残っている。

2300億円投入し水質浄化

「冷たいけど、とても良い水質。泳げると証明できた」。パリ市のイダルゴ市長は17日、市中心部のセーヌ川で約100メートルをクロールで泳ぎ、川の安全性をアピールした。

セーヌ川では大会期間中、トライアスロンの水泳やオープンウォータースイミングが実施される予定だが、大腸菌の検出値が許容上限を上回るなど汚染が問題視されていた。仏政府とパリ市は約14億ユーロ(約2350億円)を投じて水質浄化対策を実施。家庭からの排水などの流入を防ぐ貯水槽を地下に新設した。

計画は功を奏し、水質は徐々に改善。パリ市は10~16日の7日間の水質を調べたが、うち6日は遊泳可能な基準値内に収まった。五輪の大会組織委員会のエスタンゲ会長は競技の実施に問題がないとの認識を示す。

水質危ぶむ声消えず

セーヌ川はかつては市民が遊泳を楽しむ憩いの場で、1900年にパリで初の五輪が開催された際にも水泳競技が行われた。しかし、排水による水質汚染が進み、23年に遊泳が禁止された。88年には、当時パリ市長だったシラク元大統領が水質改善を掲げ、「セーヌ川がきれいになったことを証明するために泳ぐ」と意気込んだが、実現しなかった。セーヌ川を浄化し、遊泳を解禁することはパリ市の長年の「夢」(イダルゴ氏)だった。市は2025年夏に、セーヌ川に遊泳場を設置する方針だ。

ただ、大会時に大雨などの増水により、水質が悪化する恐れがある。水質検査の専門家、ダン・アンジェレスク氏はセーヌ川の浄化が進んだとしつつも、「水質の状況は依然として危うい」と指摘した。トライアスロンに出場予定の選手はメディアに「セーヌ川で泳ぐことを(色んな人に)心配される」と明かした。

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