ロシアがウクライナ東部ドニプロの標的に対して大陸間弾道ミサイル(ICBM)による攻撃を実施したのが事実とすれば、ICBMが武力紛争で使用された史上初の事例となる。
プーチン露政権によるICBMの使用は、露政権が19日に核兵器の使用基準を引き下げ、ロシア領土に対する通常兵器による攻撃に核兵器で報復できると定めたのに続くものだ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)によると、使用されたICBMはRS26(射程約5800キロ、弾頭搭載量約800キロ)とみられる。
国連軍縮研究所(UNIDIR)の研究員はX(旧ツイッター)への投稿で「通常弾頭を搭載したICBM攻撃は低精度かつ高コストで無意味だ」と指摘した。今回の攻撃は、露政権が今後、ウクライナの攻撃に対して核による反撃を辞さないという脅しをほぼ唯一の目的としていたのは明白だ。
一方で攻撃は、ウクライナに対して米英が自国製の長距離攻撃兵器を露領内に使用するのを容認し、ウクライナでの戦況巻き返しに向けたテコ入れを強めたのに対抗するものでもある。
米英製の長距離攻撃がウクライナの勝利に向けて決定的な役割を果たす公算は小さいものの、ウクライナ東部や、同国軍が一部を制圧した露西部クルスク州での露軍の攻勢を押し戻す効果が期待されるため、ICBMの使用は露政権の焦りの裏返しともいえそうだ。
ICBMは射程5500キロ以上の弾道ミサイル。米議会調査局によるとロシアは今年9月末現在、326発のICBMを配備しているとされる。(ロンドン 黒瀬悦成)