【ロンドン=黒瀬悦成】米軍は13日、ロシアの飛び地カリーニングラードから約250キロ離れたポーランドのレディコボに地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の基地を開設した。ロシアのペスコフ大統領報道官は同日、「ロシアを軍事的に封じ込める意図がある」と反発し、対抗措置の実施を表明するなど、ウクライナ戦争をめぐり対立を深める米欧とロシアの間で緊張が一層高まるのは必至だ。
ポーランドの基地は同国で初の米軍の常設基地で短距離~中距離弾道ミサイルの迎撃が可能になる。北大西洋条約機構(NATO)による域内のミサイル防衛の強化構想の一環に位置付けられ、息子ブッシュ米政権下の2000年代から計画が進められてきた。
欧州ではトランプ次期大統領がロシアをにらんだ欧州防衛への関与を低下させることへの懸念が広がっているが、ポーランドのシコルスキ外相はX(旧ツイッター)での投稿で「(基地開設は)米国の地政学的決意の表れだ。米国で誰が大統領であるかに関係なく、ポーランドと米国の関係は強固だ」と歓迎した。
NATOのミサイル防衛をめぐっては、16年からルーマニア南部でイージス・アショアの運用が始まっているほか、米海軍がスペインのロタ港に弾道ミサイル迎撃能力を持つ駆逐艦を前方配備中だ。トルコのクレチクには早期警戒システムが設置されている。
ただ、ポーランドの基地はイランから飛来する弾道ミサイルの防衛を主目的とし、ロシアから飛来するミサイルに対応できるようにするにはシステムの改修が必要とされる。ポーランドのコシニャクカミシュ国防相は、同国の基地がより広範な脅威に対応可能になるよう米国と協議を進める考えを明らかにした。