【パリ=三井美奈】プーチン露大統領がウクライナ侵略で核兵器の威嚇を強める中、ロシアに近い欧州諸国が危機対応に本腰を入れ始めた。ドイツ政府は25日、国民向けに避難シェルターのリスト化を進めると表明。スウェーデンなど北欧各国は戦争勃発を視野に、新たな国民向けパンフレットを作成し、水や食料の備蓄を呼びかけている。
ドイツ政府報道官によると、政府は危機発生時にシェルターとして使える地下駐車場や駅舎を地図化したうえで、国民に避難先を知らせる携帯アプリを作る計画。「国民にシェルターや自己防衛の重要性を知ってもらう」ためのキャンペーンを行うとしている。
独政府はウクライナ戦争を受けて昨年、民間防衛体制の検討に着手。シェルター計画については今年6月、州政府との協議で基本方針に合意した。国内には第二次大戦や東西冷戦中に作られたシェルターが約2千カ所あったが、現在、避難用に使えるのは579カ所。約8400万人の人口に対し、48万人分だとしている。
スウェーデン政府のパンフレットは「戦争や危機が起きたら」が表題。2018年に作った民間防衛用冊子の改訂版で、戦争への備えが大幅に加筆された。民間緊急事態庁が今月18日に配布を始め、2週間で国内全520万世帯に届けるとしている。
パンフレットは「国が戦争状態、あるいは武力紛争に直面した場合、緊急警報を国民に通知する」として、避難命令や空襲時のサイレンの違いを説明。偽情報への対応策や備蓄すべき物資を指示し、家庭菜園を奨励している。「核兵器」の項目もあり、「空襲時のように身体を覆え。シェルター避難が最適策。放射線レベルは数日で大幅に下がる」と解説している。
フィンランドも「騒乱や危機の際に何をすべきか」と題した案内をインターネットで公開した。停電や断水への対応策のほか、地下シェルターでのトイレの使い方、換気の仕組みを解説している。ノルウェーも国民向けの危機対応パンフレットで、「気象災害や事故、破壊工作、最悪の場合は戦争が起きうる」として水や食料、電源確保などの備えを呼び掛けている。
スウェーデンとフィンランドはロシアのウクライナ侵略を受け、北大西洋条約(NATO)に加盟。ピストリウス独国防相は今年1月、ロシアが今後5~8年の間にNATO欧州側を攻撃する可能性があるとの見方を示していた。