Infoseek 楽天

仏軍、日本との宇宙協力に意欲 司令部に自衛官受け入れも 中露の脅威に新領域で対抗

産経ニュース 2024年8月12日 15時0分

フランス空軍が、宇宙領域での日本との協力に意欲を見せている。7月下旬に来日した仏空軍作戦旅団長のトマ准将は「自衛官が近く、フランスの宇宙司令部に行くことになるだろう」と語り、自衛官の常駐を受け入れる計画があることを明らかにした。中露の脅威が高まっていることを受け、日仏両政府は陸海空に次ぐ新たな領域として宇宙での安全保障協力を進めたい考えだ。

日本と2度目の戦闘機訓練、規模拡大

7月19日、茨城県の航空自衛隊百里基地。曇天の中を相次いで着陸したラファール戦闘機2機は、ゆっくりと滑走路を進み、空自消防車が放水で描いたアーチの下をくぐり抜けた。

この日は他にも輸送機A400Mの3機、多用途空中給油・輸送機A330MRTTの2機も百里に飛来した。

日仏の戦闘機訓練は昨年7月の空自新田原基地(宮崎県新富町)に続いて2度目だが、仏空軍は参加規模を昨年の4機から今年の7機へと拡大させた。今年の仏空軍の派遣団は総勢約220人に上った。

「日仏の交流はこれからますます深まっていくものと確信している。わが国の安全保障はもとより、この地域の安全を確保するためには、同盟国のみならず一カ国でも多くの国々と連携を図ることが重要だ」

歓迎式典で空自中部航空方面隊司令官の門間政仁空将はこう語った。仏空軍は日本で2日間の共同訓練を行ってからオーストラリアに向かい、現地でも空自との共同訓練を行う日程だった。

安保分野で進む日欧の接近

実は同じ7月19日には、北海道にある空自の千歳基地にも、ドイツ空軍とスペイン空軍の戦闘機や輸送機など約10機が飛来して共同訓練を始めた。仏独西の3カ国の空軍機が同時期に日本に展開したのは初めて。欧州主要国がインド太平洋の安全保障に関与を強めていることを象徴する日となった。

そうした中で注目されるのは、フランスが宇宙分野での協力に踏み込んでいることだ。

仏空軍宇宙司令官のアダン少将は百里基地での記者会見で「日仏には宇宙領域でも多くの交流がある」と指摘。宇宙の安全に関わる情報を日仏間で日常的に交換していることに言及した。

日仏共同訓練で仏側指揮官を務めたトマ准将は、宇宙司令部への自衛官受け入れ計画も産経新聞の取材で明かした。仏政府によると、航空自衛官の受け入れは来年となる見通し。派遣先は仏南西部トゥールーズの宇宙司令部とみられる。

衛星攻撃兵器の開発を進める中露

ウクライナを侵略するロシアと、南・東シナ海で覇権主義的行動を強める中国が連携を強めている。これを受け、「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は密接に関連している」との認識が欧州主要国と日本の間で共有されつつある。

中でもフランスは、南太平洋にニューカレドニアやポリネシアなどの領土を保有しており、インド太平洋を「戦略的利益を有する地域」と位置づけて関与強化を図っている。

宇宙領域を巡っては、日仏が2016年、政府間対話の枠組み「包括的宇宙対話」を新設した。17年の宇宙対話では、人工衛星に接近するデブリ(宇宙ゴミ)などの物体を把握する宇宙状況監視(SSA)体制の強化に向けた協力を確認した。

連携が進む背景には、中露が宇宙領域でも軍事活動を強めているという脅威の認識がある。

現代の軍事で人工衛星は中核的機能を担うが、中露は衛星攻撃兵器(ASAT)の開発に余念がない。ロシアは21年、ミサイルによる人工衛星の破壊実験を行い、大量のデブリを地球軌道上に拡散させた。中国も07年に同様の実験を行った。中露は他国の衛星をレーサーなどで破壊する「キラー衛星」の開発・配備も進めているとされる。(岡田美月)

この記事の関連ニュース