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露クルスク州への越境攻撃1カ月 ウクライナ、東部の劣勢打開できず 露は反撃準備

産経ニュース 2024年9月6日 13時16分

ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃は6日、着手から1カ月を迎えた。ウクライナは越境攻撃で露軍戦力を分散させ、最激戦地のウクライナ東部で劣勢を打開することを狙ったが、現時点で露軍の攻勢を止められていない。一方、プーチン露大統領は反撃に乗り出し、ウクライナ軍を駆逐する方針を明言した。露軍が6万人規模の戦力を同州に配置したとの情報もあり、越境攻撃の帰結はなお見通せない。

ウクライナ軍は8月6日に越境攻撃に着手。1万~1万5千人規模の精鋭部隊を投入したとされる。これまでに同州の集落100カ所と約1300平方キロを占領し、露軍兵約600人を捕虜にしたとしている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、越境攻撃の狙いを①東部ドネツク州に展開する露軍をクルスク州防衛に回させ、戦力を分散させる②露領土の占領をロシアに譲歩を迫る材料とする-などだと説明した。

ただ、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は8月下旬、露軍戦力の分散という狙いについて「露軍はそれを見抜き、むしろ東部に戦力を集中させている」と策略が外れたことを認めた。東部では現在もウクライナ軍が劣勢だとされる。

一方のロシアは、越境攻撃で第二次大戦以来となる他国軍による自国領占領という「屈辱」を味わった。現地住民約12万人が避難を強いられ、強い指導者像を演出してきたプーチン氏の威信にも傷がついた。

露政府系機関の世論調査では、プーチン氏を「信頼する」との回答は越境攻撃前に約80%だったが、8月25日時点では75%台に低下。越境攻撃の長期化が影響した可能性がある。

プーチン氏は今月2日、「クルスク州に侵入した無法者を罰する」と表明。5日には同州の奪還は「神聖な義務」だとし、反撃に乗り出す方針を明確にした。

ゼレンスキー氏は最近、露軍が約6万人の戦力を同州に投入したと指摘。米シンクタンク「戦争研究所」は、露軍がウクライナ軍の前進を止めた後、反撃に乗り出す計画だとみている。今後は、露軍の反撃をウクライナ軍が阻止できるかが焦点となりそうだ。

米外交誌フォーリン・アフェアーズは2日、越境攻撃は現時点でウクライナにとって利益と損失のどちらが上回るか分からない「賭け」だと指摘。占領地域を長期的に維持できれば、ロシアに譲歩を迫る圧力になりうると分析した。

同誌は一方で、越境攻撃は「既に不安定なウクライナ東部の防衛線をさらに弱体化させている」とも評価。今後、東部の領土の大部分を失い、クルスク州の占領地域も露軍に奪還される「最悪のシナリオ」も起きうると警告した。

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