Infoseek 楽天

危機感募らせるフランスの移民ら 7日に下院決選投票 極右支持者は治安悪化を懸念

産経ニュース 2024年7月5日 19時54分

フランス国民議会(下院)総選挙の決選投票が7日に迫る中、移民らが極右政党「国民連合」(RN)の躍進に警戒を強めている。移民に厳しいRNの公約やその支持者の差別的な言動に危機感を抱き、抗議活動などを活発化。移民の犯罪を懸念するRN支持層との溝も深まっている。

プラカード掲げ

「RN、くたばれ!」

移民や2世ら数千人が3日夕、パリ中心部の共和国広場に集まり、口々に叫んだ。集会の参加者はRNのバルデラ党首を批判するプラカードなどを掲げた。広場にそびえ立つ国の象徴のマリアンヌ像に登り、「移民を守るために一致団結を」と叫ぶ男性もいた。

参加したアフリカ系移民の男性(29)は「RNは移民に敵意をむき出しにする人種差別者の集団。私たちの生活を破壊する」と怒りを語った。

集会にはノーベル文学賞受賞者の作家、アニー・エルノー氏もビデオメッセージを寄せ、「RNに過半数議席をとらせてはならない」と訴えた。

RNは公約で移民へのさまざまな制限を掲げる。家族を呼び寄せる条件を厳格化するほか、不法滞在者の医療費を補償する制度を廃止して緊急支援に限定。外国人の子供が18歳になると国籍を得られる仕組みも廃止する。RNが下院多数派を握ってバルデラ氏が首相に就いた場合、これらの施策実現のための法案を議会に提出する構えだ。

バルデラ氏は「防衛や安全保障に関する政府の要職から二重国籍者を除外したい」とも発言している。

RN過半数なら権利縮小

6月30日の第1回投票で得票率で首位となったRNも、決選投票で過半数の議席を確保するのは難しいとみられている。ただ、マクロン大統領の与党連合と左派連合「新人民戦線」の選挙協力が実際にどこまで機能するかは見通せない。

移民問題の研究者は、RNが過半数をとれば、人口の1割程度を占める移民の「権利が急速に縮小する」と分析する。

移民らはRN支持者が党の躍進で人種差別的な言動をエスカレートさせる恐れも警戒。これまでに仏中部の町に暮らす黒人女性が一部の支持者に「犬小屋に行け」などと暴言を浴びせられたとも報じられている。

一方、RNの支持層には移民増加に伴う治安悪化を懸念する声が多い。欧州メディアによると、第1回投票でRNの候補者が首位になったパリ近郊セーヌ・エ・マルヌ県の選挙区では近年、移民の犯罪が増加。RN支持者の地元住民は「移民受け入れに全面的に反対しているわけではないが、増え過ぎて治安維持が困難になるのは問題」と強調。「『国のため』と冷静に考えた一票。『差別主義者』と非難されるのは心外だ」と憤った。(パリ 板東和正)

この記事の関連ニュース