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厳戒のパリ、観光需要が低迷 宿泊料金高騰やテロ脅威、通行規制で敬遠の動き

産経ニュース 2024年7月20日 17時14分

【パリ=板東和正】パリ夏季五輪の開幕ムードが高まる中、現地の観光需要が昨年に比べて伸び悩んでいる。宿泊料金の高騰やテロの脅威、厳戒態勢が敷かれた市内の通行規制への不安から観光客がパリを敬遠する動きが加速した。五輪開催期間中は観光客が増える見通しだが、高額なホテルの利用を渋る可能性もあり、宿泊需要がどこまで回復するかは不透明だ。

パリ五輪の開会まで1週間となった19日。パリ市内中心部の観光名所、凱旋門の近くにある五輪の公式グッズ店を訪れると、レジに長蛇の列ができていた。グッズ店の女性店員は「連日、多くの国の観光客が訪れる。五輪の盛り上がりを徐々に感じている」と語った。

凱旋門の前には記念撮影をする家族連れやカップルが殺到。五輪のシンボルマークが掲げられたエッフェル塔を一目見ようとする観光客の姿もあった。ただ、市内の飲食業の男性(49)は「例年の夏より観光客の姿がまばらだ」と話す。

事実、パリでは観光客が減り、航空会社や宿泊施設が苦戦を強いられている。仏航空大手エールフランスは1日、観光客減少により6~8月に最大1億8千万ユーロ(約308億円)の損失を見込んでいると発表した。仏紙フィガロなどによると、6月1日から26日のパリのホテルの全体の売上高は昨年の同時期と比べて約25%減少。7月のホテルの予約件数は昨年よりも大幅に減ったという。

観光客減少の背景には価格高騰や治安悪化への不安がある。五輪開幕直前から開催期間にかけ、パリの宿泊施設の平均価格は昨年に比べて70%近く急騰した。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に関連したテロの脅威も拡大。仏内務省は5月、五輪期間中のテロを計画したとして、イスラム過激派に触発されたとみられる男を逮捕したと発表した。

テロ対策の警備で行動を制限されるリスクもある。五輪開会式の会場となる中心部のセーヌ川周辺では、18日から「対テロ保護区域」として通行規制が敷かれた。住人や観光客が区域に入るには、通行許可証に当たるQRコードを事前に取得して警官らに提示する必要があり、取得を忘れた観光客は「引き返すしかない」と困惑していた。

一方、開幕後は観戦者がパリに押し寄せると予想される。五輪のチケット販売枚数は17日時点で870万枚に達し、過去最多記録を更新した。パリ市は五輪中、バーやレストランで屋外施設が営業できる時間を深夜まで延長すると決定。宿泊者数を増やして観光収入を引き上げようと躍起だ。

しかし、近隣諸国の観光客はホテルの料金を節約する傾向が強い。ある英国人女性はロイター通信に「五輪の試合観戦後は夜行バスでロンドンに戻る」と打ち明けた。

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