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英極右デモ沈静化せず 「反差別」対抗デモも 発足1カ月のスターマー政権に厳しい試練

産経ニュース 2024年8月6日 18時7分

【ロンドン=黒瀬悦成】児童刺殺事件をめぐる偽情報を発端とする英極右勢力の暴動は沈静化の兆しを見せず5日、南西部プリマスで暴徒と警官隊が衝突した。極右による暴力の標的となっているイスラム教徒の一部が鉈(なた)などの刃物で武装して対抗する動きも広がり、5日で就任1カ月を迎えたスターマー首相は早くも大きな試練に直面している。

イスラム教徒自警団と衝突も

プリマスでは5日、極右勢力に扇動された暴徒らが「反差別」などを掲げるデモ隊とにらみ合い、両者の間に割って入った警官隊に石やレンガを投げるなどした。地元警察によると警官ら3人が負傷した。

スターマー氏は5日、閣僚や警察幹部らと対策会議を開き、今後の暴動に即応できるよう専門の警官隊を待機させるほか、暴徒の逮捕と起訴に全力を挙げることを確認した。

スターマー氏は会議後、暴動を扇動する偽情報の拡散などネット上の行為も犯罪と認定し、刑事罰の対象にすると指摘した。

極右の暴徒は各地のモスク(イスラム教礼拝所)を襲撃の対象としていることから、イスラム教徒の一部が自警団を結成し、極右勢力と衝突する事態も起きているとの情報もある。

背景に移民政策への不満か

X(旧ツイッター)を所有する実業家イーロン・マスク氏は暴動に関し「内戦は不可避だ」と投稿。これに対し首相府報道官は声明で「不当な発言だ。連中は少数派のならず者で、英国の意見を何ら代弁していない」と反発した。

暴動をめぐっては、極右団体「イングランド防衛同盟」を創設した著名な反イスラム活動家のトミー・ロビンソン氏がXで暴力を扇動する投稿を繰り返していることが騒乱拡大の要因の一つに挙げられている。同氏のフォロワー数は100万人に迫る勢いで急増中で、投稿を野放しにしているXへの批判も強まっている。

ただ、暴動の背景には、スターマー政権の移民政策への不満があるとも指摘されている。政権は発足直後、保守党のスナク前政権が打ち出した不法移民をルワンダに強制移送する計画を撤廃し、国境警備の強化や密航業者の摘発に重点を置くと表明した。だが、移民流入を効果的に防ぐ方策は現時点で明確に示されていない。

暴徒には反移民を旗印とする大衆迎合政治家のファラージ下院議員率いる右派政党「リフォームUK」の支持者らも合流しているとみられている。

同党は7月の総選挙(下院、定数650)で5年前の前回総選挙比12・3ポイント増の得票率14・3%を記録したが、獲得議席数は二大政党に有利な小選挙区制のため5議席にとどまった。自身らの主張が国政に反映されないとの不満が同党支持者を暴力デモに駆り立てた可能性も否定できない。

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