ロシアのプーチン大統領は17日、首都モスクワでイランのペゼシュキアン大統領と会談し、安全保障面や経済面などでの両国関係の強化を定める「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名する。ウクライナ侵略と核開発を巡ってそれぞれ欧米諸国と対立するロシアとイランは、同条約の締結を通じて「反欧米陣営」の結束を誇示する構えだ。
ロシアは昨年、北朝鮮とも同名の条約を締結。一方の国が外国から攻撃を受けた際に他方が軍事支援する義務を定めるなど、事実上の軍事同盟条約とされた。ただ、タス通信によると、イラン側は今回の条約について「露朝間の条約とは異なり、相互防衛条項は含まれない」と説明した。
ペスコフ露大統領報道官はイランとの条約締結について「両国にとって重要な出来事だ」と説明。イラン側も今回の会談が「歴史的なものになる」とした。両首脳は会談後、共同声明を発表する。
露大統領府は、プーチン氏とペゼシュキアン氏が貿易や投資、物流などの経済協力の拡大や、国際・地域問題について協議するとしている。ウクライナ情勢や中東情勢を念頭に置いているとみられる。ただ、ロシアはイランから調達した自爆ドローン(無人機)をウクライナへの攻撃に使用しているほか、イランから弾道ミサイルを供与されているとの観測もあり、両首脳は軍事協力の拡大についても話し合う可能性が高い。
今回の会談を巡っては、20日のトランプ次期米大統領の就任式直前に行われることから、両首脳がトランプ氏への対応を調整するためのものだとする見方も出ている。トランプ氏は就任後、イランへの圧力を強める公算が大きいためだ。これについてロシア側は「会談とトランプ氏の就任は無関係だ」と主張している。
ロシアとイランは近年、関係強化を進めてきた。ロシアと中国が主導する「上海協力機構」(SCO)は2023年、イランを正式加盟国としたほか、中露など主要新興国でつくる「BRICS」も昨年、イランを新メンバーに加えた。(小野田雄一)