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ロシア・ベラルーシの「中立選手」に疑念 国際人権団体「半数がパリ五輪出場資格に違反」

産経ニュース 2024年8月4日 19時57分

【パリ=板東和正】パリ五輪に「個人の中立選手(AIN)」として参加資格を得たロシア、ベラルーシ選手の半数余りが、ロシアによるウクライナ侵略を支持するなど中立的な立場を逸脱しているとの疑いが浮上している。国際人権団体は、国際オリンピック委員会(IOC)が中立基準を満たしていない選手の出場を許可したとして非難している。

「次の五輪では、わが国の国旗と国歌のもとで競技を戦いたい」

2日のトランポリンの男子決勝で、東京五輪に続く2連覇を遂げたベラルーシ出身のイワン・リトビノビッチ選手はそう語った。AINの金メダルは今大会初。表彰式ではAINの旗が掲揚され、国歌の代わりに歌詞のない曲が流れた。

テニスではAINで露出身のディアナ・シュナイダー、ミラ・アンドレーワ両選手が2日の女子ダブルス準決勝で勝ち、4日に決勝を迎える。

AINの「中立」に疑念を突きつけたのは、人権団体「グローバル・ライツ・コンプライアンス」(GRC、本部オランダ)が7月18日に公表した報告書だ。IOCにパリ五輪の参加を許可されたロシア、ベラルーシ選手の計約60人のうち33人が中立基準に違反していると指摘。露選手は3分の2以上が違反に該当しているとした。

報告書などによると、交流サイト(SNS)で過去にウクライナ侵略を支持する立場を示したことや、ロシアやベラルーシの軍や当局に関わったりした記録などが確認された。シュナイダー選手は22年2月24日の露侵攻開始翌日、侵略を正当化する露国営メディア編集長の投稿に、アンドレーワ選手も23年、侵略を支持する投稿に、それぞれ「いいね」を押した。

このほかロシアのエフゲニー・ソモフ選手(水泳)がスポーツを振興する露国防省傘下の組織に所属していたことなどが判明したという。

GRCはIOCが選手のSNS投稿などを調査していたことを念頭に、審査の欠陥を批判。「結果的に国家が他国を暴力的に侵略しても世界の舞台で歓迎されることを示してしまった」とした。

ウクライナのゼレンスキー大統領も出場を許可したIOCの対応を「中途半端な措置」と酷評。「(各国の人々が)中立の旗の下にいる選手がロシアとベラルーシの選手であるとはっきりと見抜いている」と強調した。

一連の経緯を踏まえ、欧州メディアでは、IOCがロシアの侵略行為を理由に、露選手らを「罰することができないか、する気がない」(ポーランドのスポーツジャーナリスト、カミル・コルスト氏)といった厳しい意見が出ている。

AIN 国際オリンピック委員会(IOC)が個人の中立選手としてパリ五輪の出場資格を容認したロシアとベラルーシの選手。IOCの審査を経て選出された。中立選手は両国の国歌や国旗の使用が禁止されるほか、7月26日の開会式の入場行進の参加も認められなかった。露側は選手の出場が制限されたことを受け「人種差別」などとIOCを非難している。

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