Infoseek 楽天

反捕鯨ワトソン容疑者の弁護人 ゴーン被告も担当、日本の逮捕要求に「政治報復だ」と反発

産経ニュース 2024年8月26日 11時14分

日本がデンマークに身柄引き渡しを求めている反捕鯨団体「シー・シェパード」の創設者、ポール・ワトソン容疑者を巡り、弁護人のフランソワ・ジムレ弁護士が産経新聞とオンラインで会見した。ジムレ氏はフランス人で日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の弁護人を務めた人物。「日本では公正な裁判が期待できない」と主張し、ワトソン容疑者の日本への移送を阻止するため法廷闘争を続ける構えを示した。

ワトソン容疑者は7月21日、デンマーク自治領グリーンランドで日本の国際手配に基づいて逮捕された。9月5日が勾留期限で、デンマーク政府が引き渡しの是非を決める。

ジムレ氏はフランスの元駐デンマーク大使。産経新聞との会見で、「日本側の追及は(傷害や威力妨害容疑に)見合わないほど執拗(しつよう)。捕鯨に戦いを挑んだことへの『政治報復』にほかならない」と主張した。

その上で、日本での裁判を拒否する理由に「人質司法の問題」をあげた。無罪を主張する容疑者が長期勾留される状況を指す言葉で、国際社会でも批判が強いと訴えた。2018年に逮捕されたゴーン被告への取り調べを重ね、「2つのケースは同じ。日本のプライドと報復の問題になっている」と司法制度への不信感をあらわにした。ワトソン容疑者は「日本文化に敬意を持っている。日本人に反発を抱いているわけではない」とも述べた。

会見には、シー・シェパードのラミヤ・エセムラリ仏支部長も参加した。ワトソン容疑者は2016年、米連邦地裁の調停で、調査船妨害は永久に行わないとする合意を日本側と結んでいるが、同支部長は「合意は南極海が対象」であり、北太平洋での活動は拘束されないと反論した。また、「日本の主張は虚偽だと裏付けるビデオがある」と主張。2010年にシーシェパードが日本の捕鯨船に薬品瓶を投げ込んだとき、デッキには乗員がおらず、傷害容疑を否定する証拠になるとした。(三井美奈)

「傷害容疑を否定する証拠ビデオある」と主張

オンライン会見での主な発言は以下の通り。

ジムレ弁護士

「ワトソン容疑者の日本への身柄引き渡しは不当。デンマーク司法省が引き渡しを決めたら、全力で阻止する。世界中で抗議運動も行われる」

「日本で公平な裁判が受けられるとは思えない。『人質司法』には日本の多くの弁護士のほか、国連の拷問禁止委員会も改善を求めている。日本側が(傷害や威力妨害)容疑に見合わない過度の追及をするのは、国のプライドと報復の問題だから。ゴーン被告のケースと同じだ」

シー・シェパードのエセムラリ仏支部長

「日本の捕鯨産業は、鯨は栄養源だと訴えてきた。現在、そのような理由は通じない。鯨肉消費者は少数なのに、日本では最近、巨大な捕鯨船が建造された」

「日本側は、2010年にシー・シェパードが薬品瓶を捕鯨船に投げ込み、乗員を負傷させたと主張している。当時撮影されたビデオでは、瓶が投げ込まれたときにデッキに乗員はいなかったことが示されている。日本の捜査当局はビデオの存在を知りながら、無視した」

「(マクロン仏大統領がデンマークに身柄引き渡しをしないよう求めたと報じられたことについて)マクロン大統領が主張したのは、政治的理由によらず、正しい裁きをするべきだというだけ。(釈放を)頼んだわけではない」

この記事の関連ニュース