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英総選挙まで1週間、ウクライナ侵略で国防が重要争点に 政権奪取へ労働党が現実路線に

産経ニュース 2024年6月27日 17時6分

【ロンドン=黒瀬悦成】7月4日投開票の英総選挙まで1週間。スナク首相率いる与党・保守党が最大野党の労働党に大幅なリードを許している構図は変わらず、14年ぶりの政権交代の可能性が高まる。選挙戦ではロシアによるウクライナ侵略を受けて国防政策が重要争点に浮上。労働党のスターマー党首は英国の核抑止力の堅持を打ち出すなど現実路線に転じ、伝統的に国防問題に強い保守党への対抗姿勢を強めている。

労働党は政権意識し中道路線に

英BBC放送が各種世論調査をまとめて集計した各政党の平均支持率(25日現在)は、労働党41%、保守党20%。大衆迎合政治家のナイジェル・ファラージ氏率いる右派政党「リフォームUK」も17%で保守党を猛追している。

スターマー氏は13日、政権交代を意識して「チェンジ」と銘打った公約を発表し、国防政策に関して「北大西洋条約機構(NATO)と核抑止力の重視」を打ち出した。

英国は核保有国で、北部スコットランドに潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載する戦略原潜を配備している。

労働党は伝統的に核軍縮に積極的な立場を示し、中でも急進左派色が強かったコービン前党首(在任2015~20年)は一貫して核廃絶を主張していた。

労働党はコービン氏時代の19年に行われた総選挙で左派的な政策が嫌われて惨敗。スターマー氏はこれを教訓に、同党をブレア元首相(在任1997~2007年)時代のような中道路線に戻すことを目指す。

国防予算に関しても、弱体化が目立つ英軍の再建に向け、国防費を国内総生産(GDP)比2・5%に引き上げると表明した。

「選択的兵役制」で若年層が保守党離れ

対する保守党は11日発表の政権公約で、深刻化する英軍の兵員不足に向けて18歳の若者に一定期間の兵役または公的機関での社会奉仕活動を課す「選択的兵役制」の導入を掲げた。

ただ、若者らの間からは「1960年に廃止された徴兵制の復活だ」などとして反発が起き、若者層の間で保守党離れを引き起こすなど、選挙戦へのマイナスも指摘されている。

国防費については「30年までにGDP比2・5%達成」を掲げ、具体的な目標年限を設けていない労働党との違いを示した。

対ウクライナでは両党とも軍事・経済支援を継続するとしている。

移民政策では、保守党が不法移民のルワンダへの強制移送を総選挙後の7月に開始すると表明した。

労働党は、国境警備の司令部を設立する一方、密航業者の摘発を強化するとし、移民問題に積極関与する姿勢を打ち出した。移民のルワンダ移送の制度は廃止するとしている。

経済政策では保守党が30年までに年間約170億ポンド(約3兆4500億円)の大型減税や法人税の据え置きを発表。労働党は富裕層への課税強化の一方、経済界に配慮して法人税の課税上限を設定するとした。

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