ロシアのラブロフ外相と南カフカス地方の旧ソ連構成国アルメニアのミルゾヤン外相は21日、露首都モスクワで会談した。両国は同盟関係にあるが、近年は不和が進んできた。ラブロフ氏によると、両国は互いの懸念について「率直な対話」を行っていく方針で一致した。両国とも決定的な断絶は得策でないとの判断から、一定の関係改善を模索する姿勢を示した形だ。
会談でラブロフ氏は「昨年は両国関係にとって困難な年だった」と認めつつ、「アルメニアは変わらぬロシアの戦略パートナー国であり、同盟国だ」と表明。両国間の貿易が増加しているとも強調した。ミルゾヤン氏も「アルメニアは常にロシアの利益を考慮に入れるよう努めている。ロシアもわが国の利益を考慮に入れるよう望む」と応じた。
アルメニアは露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)と「ユーラシア経済連合」(EAEU)の加盟国。ただ、近年は隣国アゼルバイジャンとの領土紛争で「軍事支援の義務を果たさず、アルメニアの敗北を容認した」などとロシアやCSTOへの不満を強め、昨年、CSTOへの参加を凍結した。
他方でアルメニアは今月、欧州連合(EU)加盟を目指す方針を決定。米国とも「戦略パートナーシップ憲章」に署名し、欧米への接近を加速させてきた。
これに対し、ロシアはアルメニアの対露非難や欧米接近に不快感を表明。EAEU加盟国のアルメニアがEU加盟を目指すのは不適切だとする立場も示した。
対立を深める両国だが、アルメニアにとってロシアは最大の貿易相手国。ロシアも地域での影響力を維持するためにアルメニアを必要としており、両国とも決定的な関係断絶を招く事態は避けたい考えだとみられる。(小野田雄一)