【ブリュッセル=黒瀬悦成】北大西洋条約機構(NATO)は3日、ブリュッセルで外相会合を開いた。2日間の日程で、ロシアに侵略されたウクライナのゼレンスキー大統領が同国のNATO加盟招待を今回の会合で行うよう要請したことなどについて話し合う。
ゼレンスキー氏は先月29日に放映された英スカイニュースの番組で、仮に戦闘停止に向けてロシアによる南部クリミア半島や東部ドネツク州などの実効支配を一時的に認めるにせよ、残りのウクライナ領土は「NATOの傘下に置く必要がある」と述べ、早期加盟の実現を要求した。
また、ロイター通信によると、ウクライナのシビハ外相はNATOに書簡を送り、今回の外相会合でウクライナをNATO加盟に招待するよう要請した。書簡は、ウクライナのNATO加盟は「不可避」であることをロシアのプーチン大統領に見せつけることで、同氏がウクライナ侵略で狙う加盟阻止という大目標の一つを打ち砕くことができるとしている。
ウクライナとしては、NATOからの正式招待を受けて戦闘終結の後に加盟を実現させた上で、ロシアの実効支配地域を外交的手段で取り戻したい考えだ。
加えて、来月に就任するトランプ次期米大統領は、ウクライナのNATO加盟を棚上げする形で和平実現を目指していると指摘され、ウクライナとしては次期米政権が誕生する前に加盟に向けた既成事実を作りたい思惑もある。
一方、NATOのルッテ事務総長は3日の記者会見で「現状では、将来の(停戦に向けた)交渉でウクライナが有利な立場を確保できるよう、支援を強化していくことに集中すべきだ」と述べるにとどめた。
会合ではヨルダンのアブドラ国王を招き、中東情勢についても協議した。