【ロンドン=黒瀬悦成】スターマー英首相は18日、ブラジルのリオデジャネイロで中国の習近平国家主席と会談した。英中の首脳が直接会談するのは2018年以来。両国の関係は対中強硬路線を掲げた保守党前政権下で冷却化したが、英経済の立て直しを最優先課題に掲げる労働党のスターマー氏は中国との関係強化を通じて「英国再生」を図る思惑から、対中融和に転じる姿勢をにじませた。
英首相府報道官によるとスターマー氏は会談で、貿易や投資などをめぐるパートナーシップ関係の深化について話し合ったとした上で、中国とは「共通の目標の実現に向けた一貫性が保たれた、丁重で実利的な付き合い」を目指すと述べたとしている。
一方、中国国営新華社通信によると、習氏は「両国は戦略的な意思疎通を強化し、政治的な相互信頼を深めるべきだ」と述べた。
会談では、リーブス財務相が来年に訪中し、何立峰副首相と経済・財政分野の協力に関し協議することでも一致した。
習氏としては、来年1月のトランプ次期大統領の返り咲きで米国と英国など西欧主要国との関係が不安定化するのを見越し、英国を米国主導の中国包囲網から引きはがしたい狙いがあるとみられる。
スターマー氏は会談で、「香港や人権、ウクライナ戦争など、意見の異なる問題で誠実かつ率直な話し合いを求めた」としているが、一連の問題で習氏を批判したり追及したりするような言及はなかった。
英国内では保守派を中心に、スターマー政権が香港国家安全維持法(国安法)違反罪に問われて収監された英国籍の民主活動家、黎智英(れいちえい)(ジミー・ライ)氏の解放要求に及び腰な一方で、対中「すり寄り」姿勢ばかりが目立つとして批判が強まりつつある。