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マクロン仏与党と左派、激しく対立 連立交渉不調で〝三つどもえ議会〟なら機能不全も

産経ニュース 2024年7月8日 20時18分

【パリ=板東和正】7日に投開票が行われたフランス国民議会(下院)選の決選投票では、各勢力が形成した「極右包囲網」が奏功し、極右政党「国民連合」(RN)の勝利を阻んだ。ただ、マクロン大統領の与党連合は最大勢力の座を左派連合「新人民戦線」に奪われた上、下院は多数派を握る政党のない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となる公算が大きい。仏政治が混迷する懸念が高まっている。

RN阻止に超党派の連携機能

決選投票は501選挙区で行われ、与党連合と新人民戦線はRN勝利を阻止するため、200超の選挙区で候補者を一本化。仏紙ルモンドの分析では、その結果、決選投票に臨んだ候補は与党連合で255人、第1回投票で得票率がRNに次ぐ2位となった新人民戦線は335人となっていた。

フランスでは伝統的に極右勢力への忌避感が強く、国政選挙でRNの候補が決選投票に進むと、超党派で連携し、当選を阻止してきた。今回もその手法が機能した形だ。また、マクロン氏の強引な手法などへの不満は有権者に強く、決選投票では与党連合ではなく、むしろ新人民戦線に票が流れた可能性もある。

RNの厳しい移民制限に対して寛容な移民政策を掲げる新人民戦線の支持者は「経済が低迷する中、与党にもRNにもない『弱者に寄り添う』政策にひかれた」と話す。

マクロン政権「死に体」も

ただ、6月の欧州連合(EU)欧州議会選での与党連合の大敗を受けて起死回生を狙ったマクロン氏としては、極右勝利を阻んだものの、与党連合を後退させる結果となった。与党連合は改選前の250議席から80議席以上を失い、マクロン氏のさらなる求心力低迷は避けられないとみられる。

フランスでは大統領が首相を任命する仕組みで、大統領府は決選投票の結果を受け、「新議会が構成されるのを待って必要な決定を下す」とコメントした。

新人民戦線の中核を担う急進左派「不屈のフランス」を率いるメランション氏は「新人民戦線が国を統治すべきだ」と主張した上で、与党連合との連立を否定。左派連合に所属する社会党も「マクロン氏の政策を受け継ぐ連立政権は組むべきではない」とした。

新人民戦線は公約で、マクロン氏が実施した年金受給開始年齢の引き上げに反対し、富裕層の課税や最低賃金の引き上げを主張。赤字にあえぐ財政の再建をめざすマクロン氏との溝は大きい。

与党連合と新人民戦線が協力できず、下院の勢力図が三つどもえとなれば、マクロン氏の政策遂行には大きな支障が出るのは必至だ。フランスの規定では、大統領は解散後1年間、再び下院を解散できず、マクロン政権は当面、「レームダック(死に体)になる」(専門家)との指摘も出ている。

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