ロシア産天然ガスをウクライナ経由のパイプラインで欧州に輸送するためのロシア・ウクライナ間のガス通過契約が昨年末に失効し、ガス輸送が停止した問題で、このルートで露産天然ガスを輸入してきた東欧スロバキアのフィツォ首相は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、問題解決に向けた首脳会談をスロバキアで開催することを提案する声明を交流サイト(SNS)で発表した。
これに対し、ゼレンスキー氏は会談に応じるとした一方、「(今週の)金曜日に(ウクライナの首都)キーウ(キエフ)に来てください」と応じた。双方が求める会談の開催場所が異なっており、実際に会談が行われるかは不透明。会談が実現すればフィツォ氏は契約の再締結などを求めるとみられる。
フィツォ氏は声明で、ガス通過契約の破棄というウクライナの決定が「ウクライナやスロバキア、欧州連合(EU)に大損害を与えている」と指摘。ウクライナ経由での露産ガスの輸送停止によりスロバキアは年間5億ユーロ(約800億円)の損害を受けるほか、ウクライナが加盟を目指すEUの競争力も低下するとし、ウクライナにとって利益にならないと主張した。
フィツォ氏はまた、ガス通過契約の破棄に否定的なのはスロバキアだけではないと指摘。ウクライナはロシアと即時停戦すべきだとも訴えた。
フィツォ氏は従来、親露的な姿勢を示してきた。昨年末には訪露してプーチン露大統領と会談し、露産ガスの供給問題を協議した。
ロシアとウクライナは長年、ウクライナ経由での露産ガスの輸送に関する契約を結んできた。更新期限は昨年末だったが、ウクライナはガス輸出収益がロシアの戦費に転じているとし、契約延長に応じなかった。(小野田雄一)