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露の油断が招いたウクライナ越境作戦の屈辱 東部ドネツク州では露の攻勢続き戦局見通せず

産経ニュース 2024年8月17日 16時4分

ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃に着手してから10日余りが経過した。ウクライナ軍の奇襲が成功した背景には、徹底的な情報秘匿と、自国領への侵攻を想定していなかった露軍の油断があったことが判明しつつある。ただ、従来の前線であるウクライナ東部では露軍が攻勢を維持しており、全体的な戦局の先行きはなお見通せない。

6日の越境攻撃の着手後、ウクライナ軍はクルスク州の集落82カ所と約1150平方キロを制圧した。現地に「駐屯司令部」を設置し、占領地域を維持する構えだ。露領土が他国軍に占領されたのは第二次大戦の対ドイツ戦以来で、ロシアにとっては屈辱となった。

ウクライナや欧米のメディアによると、越境攻撃は極秘裏に計画され、ウクライナ軍幹部の多くや欧米諸国にも知らされていなかった。ウクライナ軍は欧米側から供与された主力戦車などを持つ精鋭部隊を投入して越境攻撃を開始。露軍は現地に装備が貧弱な国境警備部隊や経験の浅い徴兵しか配置しておらず、ほぼ無抵抗で敗走した。少なくとも数百人が降伏したとの情報もある。

クルスク州は第二次大戦中、「史上最大の戦車戦」と呼ばれるソ連軍と独軍の「クルスク会戦」の舞台となるなど、機甲部隊の運用に適した場所。そこに十分な戦力を配置していなかった露軍の油断は明らかだ。英国防省は16日、「ロシアはウクライナ軍の大規模攻撃への対応を準備していなかった」と指摘した。

ウクライナ軍の越境攻撃の狙いは、露領土を占領してプーチン露大統領を停戦交渉の場に引き出す▽露軍戦力を自国防衛に回させ、最激戦地の東部ドネツク州などでの露軍の攻勢を弱める▽軍・国民の戦意を高める-といった複合的なものだとする見方が強い。実際、米国によると、露軍はウクライナ侵略に投入していた一部の部隊をクルスク州に転戦させた。

ただ、露軍は現在もドネツク州で攻勢を維持。当初から目標としてきた同州全域の制圧を断念しない構えだ。米シンクタンク「戦争研究所」は15日、露軍は主力部隊を東部に残しており、「クルスク州防衛よりも東部での前進を優先しているもようだ」と指摘した。

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