【オシフィエンチム(ポーランド南部)=黒瀬悦成】第二次世界大戦下、ユダヤ人ら110万人以上がナチス・ドイツにより虐殺されたポーランドのアウシュビッツ強制収容所が旧ソ連軍に解放されて80年となる27日、収容所の跡地で犠牲者らを追悼する行事が開かれた。追悼式典には生き残った元収容者約50人が参加。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の悲劇が繰り返されないよう訴える。
追悼行事は、収容所跡を管理するアウシュビッツ・ビルケナウ博物館が主催。式典に先立って27日朝(日本時間同日夕)、かつて数千人のユダヤ人が虐殺された収容所の「死の壁」と呼ばれる区画で生存者とその遺族らが献花して犠牲者らの冥福を祈った。
続いてポーランドのドゥダ大統領が収容所跡で演説し、「私たちポーランド人はアウシュビッツの記憶を守る役割を担い続けていく」と述べ、虐殺の記憶を風化させないとの決意を表明した上で「世界はこのような人類の惨劇を二度と起こしてはならない」と強調した。
27日午後4時(日本時間28日午前零時)からの追悼式典にはドイツのシュタインマイヤー大統領とショルツ首相、フランスのマクロン大統領、チャールズ英国王ら欧州など約50カ国の元首や首脳らが出席した。
今年の式典では生存者らが自身の体験などについて語る一方、式典で生存者らに光を当てる配慮から各国の首脳らの演説は予定されていない。
2022年にウクライナを侵略したロシアは3年連続で招待されなかった。
アウシュビッツ強制収容所は、1940年にナチスが占領下のオシフィエンチムに設置した。ガス室を備え、欧州のユダヤ人絶滅を目指したホロコーストの中心的な施設だった。