【パリ=三井美奈】ドイツでメルケル前首相(70)の回想録が26日、出版される。「自由 記憶1954-2021」が題名。独週刊紙ツァイトなどが報じた引用によると、メルケル氏は17年に米国で就任した当時のトランプ大統領との出会いを振り返り、「すべてを不動産業者の目で判断する人」だと評した。
トランプ氏との会談は17年3月にホワイトハウスで行われ、回想録では「トランプ氏はすべての国は競争関係にあり、誰かが勝てば誰かが負けると信じている。彼の考えでは、協力による共存繁栄はありえない」と印象を記した。
プーチン露大統領については、「ひどい扱いを受けないよう警戒し、犬を使ったり他人を待たせたりして相手を罰しようと常に構えている人物」だと評価した。07年の首脳会談で、メルケル氏が苦手な犬を席上に連れてきたことを踏まえた記述とみられる。
回想録では、08年、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でウクライナの「将来の加盟」に合意しながら、手続きを決めなかったことにも言及した。「私はウクライナに加盟行動計画(MAP)参加の地位を与えることで、プーチン氏の侵略から守れると考えるのは幻想だと思った」とした。NATO入りしたウクライナが侵略された場合、ドイツ連邦議会で独軍派遣の承認を得るのは現実的ではなかったとも記した。首脳会議では、ドイツとフランスがウクライナ加盟に反対したとされる。
メルケル氏は21年まで16年間、ドイツ首相を務めた。回想録は日本を含めて約30カ国で出版される予定。