ロシア国営タス通信は8日夜(日本時間9日未明)、露大統領府筋の話として、反体制派の攻勢により政権が打倒されたシリアのアサド大統領が家族とともに露首都モスクワに到着したと報じた。ロシアは「人道的見地」に基づき、アサド氏を「亡命者」として保護したという。ロシアは従来、アサド政権の後ろ盾となってきた。
アサド氏を巡っては8日、シリアの首都ダマスカスから脱出するために搭乗した航空機が墜落し、死亡したとする観測も伝えられていた。
タスは、露大統領府筋が「ロシアは反体制派と連絡を取っている。反体制派はシリア国内にあるロシアの軍事基地や外交施設の安全を保証した」と話したとも伝えた。
これに先立ち、シリアのジャラリ首相は8日、アサド政権との合意に基づき同国に駐留してきた露軍の扱いについて「新しい政府が決めるだろう」と述べ、反体制派側とロシアの協議次第だとする考えを示していた。
ロシアは2015年、シリア内戦にアサド政権側で軍事介入。優勢だった反体制派への空爆を行い、戦局を覆した。ロシアは介入を通じ、旧ソ連時代から租借してきたシリア西部タルトスの軍港に加え、北西部ヘメイミーム空軍基地の使用権を獲得。中東やアフリカなどに軍事的影響力を行使する拠点としてきた。(小野田雄一)