北欧デンマークが国章を変更した。中央部で4つに区分けされたシンボルで、ホッキョクグマとヒツジが目立つようになった。米国のトランプ次期大統領が獲得への意欲を示すデンマーク領グリーンランドなどを強調したデザインと受け取れ、英ガーディアン紙は「米次期政権への警鐘ともみられる」と報じた。
デンマークの国章には約500年間、4カ所の内3カ所で、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーによる同君連合「カルマル同盟」のシンボルが描かれてきた。同紙によると、王冠を取り除きこれまで左下にまとめられていたグリーンランドを示すホッキョクグマが左下、英国北部にあるデンマーク領フェロー諸島を代表するヒツジが右上に独立して描かれた。
変更は昨年1月14日に任命された同国の委員会の勧告に伴うもので、同紙は「王冠排除は時代的に意味がなくなったから」としている。
デンマークのフレデリック10世国王は先週「グリーンランドもフェロー諸島も含め、われわれは一体だ」と演説した。コペンハーゲン大のセバスチャン・オルデン・ヨルゲンセン氏は「国章変更は王室が王国の統一維持を支持していると示している」と指摘。王室専門家のラルス・セーレンセン氏は「グリーンランドはデンマーク領であることは議論の余地がないと示すことが重要であり、国章変更こそがそれだ」と強調した。
トランプ次期政権を巡っては、長男のジュニア氏が今月7日、グリーンランドを訪問。ジュニア氏が「あなた方を大切にする」と話せば、トランプ氏はSNSに「わが国になれば多大な恩恵が受けられる。われわれは過酷な世界からあなた方を守る」としたうえで、選挙選のフレーズを引用し「再び偉大なグリーンランドになれる(Make Greenland Great again)」と投稿した。
グリーンランド自治政府からは本国に対する「植民地時代の名残」という反発はあるものの、デンマークが国土の喪失に対し、強力な拒否姿勢を世界に印象付けたのは間違いなさそうだ。