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中国、ロンドン中心部に欧州最大級「メガ大使館」建設計画 住民、民主活動家ら猛反発

産経ニュース 2025年2月11日 10時24分

【ロンドン=黒瀬悦成】中国政府が英首都ロンドンの中心部に巨大な大使館を建設する計画が実現する可能性が高まったとして、地元住民や在英の民主活動家らが一斉に反発している。政界や治安関係者の間では、中国当局が大使館を拠点に諜報活動や民主化勢力の弾圧を一層強化させるとの懸念も強い。13日には中国の王毅外相の訪英が予定され、英側との会談で焦点の一つとなりそうだ。

問題の計画は、現在はロンドンのウェストミンスター区にある中国大使館を、ロンドン有数の観光名所であるロンドン塔の向かいにある旧王立造幣局の敷地に移転・建設するものだ。

中国政府が2018年に購入した旧造幣局の敷地は約2ヘクタールの広さを誇る。大使館が完成すれば現在の在英米国大使館をはるかに上回る、欧州で最大級の「メガ大使館」が誕生することになる。

中国政府は21年、旧造幣局があるタワーハムレッツ区に移転申請を提出した。しかし、同区議会は22年12月、旧造幣局への周辺には多数の観光客が集まり、民主活動家などからの抗議デモが頻発すれば「住民や観光客、付近の交通に多大な影響を与える」などとして申請を却下した。

当時政権を握っていた保守党の閣僚や議員、治安当局からも、中国が新大使館を拠点に英国に対する情報収集や工作活動を活発化させたり、香港や中国・新疆ウイグル自治区などから英国に逃れてきた住民、活動家に対する監視や嫌がらせを展開する恐れが強まるとの懸念が出ていた。

中国政府は、昨年7月に労働党のスターマー政権が誕生したのを受けて移転申請を再提出したが、同区議会は同12月、再び計画を却下すると発表した。

ただ、区議会の決定には法的拘束力はなく、最終的な判断はレイナー副首相に委ねられている。今年に入り、ラミー外相やクーパー内相が大使館の移転を容認するかのような態度を相次いで示したため、民主活動家や対中強硬派の議員らが一斉に反発する事態となった。

今月9日には、旧造幣局の前で香港やウイグルの民主活動家ら千人以上や超党派の下院議員らが緊急集会を開き、移転反対を訴えて気勢を上げた。

集会に参加した保守党下院議員のトゥゲンハート元安全保障担当閣外相は「移転を認めることは、英政府が自国の防衛や英国民の保護、英国の経済的将来に関して誤った選択をすることを意味する」と述べ、移転容認は「重大な間違いだ」と強調した。

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