旧ソ連構成国のモルドバで20日、大統領選(任期4年)が行われた。どの候補者も当選に必要な過半数の票を獲得せず、決着は決選投票に持ち込まれた。同時に行われた欧州連合(EU)加盟を国家目標として憲法に定めることの是非を問う国民投票では、賛成が反対を僅差で上回り、現職のサンドゥ大統領は21日、「困難な戦いに勝利した」と表明した。暫定投票率は51・7%。
モルドバでは親欧米派と親ロシア派の政治勢力による政権交代が相次いできた。11人が出馬した大統領選では、2期目を目指した親欧米派のサンドゥ氏が得票率42・4%で首位。親露派政党に支援された元検事総長、ストヤノグロ氏が26%で2位につけた。決選投票は来月3日に行われる。
国民投票では、開票率99・8%時点で賛成50・46%、反対49・54%となった。賛否が拮抗した要因として、モルドバがEUに加盟して経済混乱が起きる事態への懸念が作用した可能性がある。
サンドゥ氏は、今回の投票に際して「わが国の自由と民主主義への前例のない攻撃があった」と指摘。約300万人の有権者のうち、「犯罪集団が30万人を買収しようとした明確な証拠がある」とし、ロシアと親露派が投票を操作したとの認識を示唆した。
国民投票で反対多数となっていた場合、2022年にモルドバの「EU加盟候補国」の地位獲得を実現したサンドゥ氏にとって政治的打撃となるのは確実だった。
今回の投票に先立ち、モルドバ当局や米国は「ロシアと親露派が票の買収や情報工作を試みている」などと非難。ロシアは否定していた。(小野田雄一)