【パリ=三井美奈】フランスでバルニエ首相の少数内閣が2日、下院で左右野党から不信任案を突き付けられ、崩壊の危機に陥った。2025年の社会保障予算案で審議を打ち切り、強行採択したことがきっかけとなった。不信任案は4日にも採決の見込みで、極右「国民連合」の動向が成立か否かのカギを握る。
バルニエ内閣は財政再建を重視し、緊縮型の予算案を組んだ。下院で最大勢力の左派連合は、当初から不信任案を提出する構えを見せていた。
バルニエ氏は下院で予算案を通過させるため、国民連合に譲歩し燃料費値上げの見直しなどに応じていた。2日になり「国民のために責任ある財政案が必要だ」と宣言。憲法が認める政府強権を発動し、予算案を採択させた。国民連合のルペン下院議員団長は「われわれの責任を果たす」と述べ、不信任案を可決させる構えを見せた。左派連合に続き独自の不信任案も提出するとした。
不信任案は、国民連合が左派連合と相乗りで賛成すれば成立する。バルニエ内閣は今年9月に就任したばかりだが、不信任可決で総辞職に追い込まれれば、マクロン大統領は新たな首相探しを迫られる。
マクロン氏は今年6月、下院を解散し総選挙を実施しており、憲法の定めで来年夏まで新たな解散はできない。総選挙の結果、マクロン与党は下院議席の3分の1に届かず、苦肉の策として野党だった中道右派のバルニエ氏を首相に迎えた。
欧州連合(EU)では、独仏2大国の政局混迷が不安材料となっている。ドイツでは11月、ショルツ連立政権が内部対立の末に崩壊。来年2月の総選挙まで、安定政権が見込めない。来年1月のトランプ米政権の発足を前に、EUは牽引(けんいん)役が不在で、戦略を描けない状況が続く。