【パリ=三井美奈】欧州連合(EU)は19日、ブリュッセルで首脳会議を開いた。参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、来年1月のトランプ米政権発足を前に「米欧の結束」を求めた。マクロン仏大統領が提案した国際部隊のウクライナ派遣に支持を表明したが、ほかの欧州諸国から応じる声は出なかった。
今回は、トランプ政権発足前にEU首脳が集う最後の定例会議。トランプ氏がウクライナの即時停戦を訴える中、EUの対応が論議された。ゼレンスキー氏は記者団に、「欧州だけでウクライナの安全を保証しても不十分。真の安全は、北大西洋条約機構(NATO)にかかっている」と発言。ウクライナの安全保障には、米国の関与が不可欠だという立場を示した。
その上で、SNS(交流サイト)に「軍事派遣団をめぐるフランス提案を支持する。ほかのパートナー国に参加を求める」と書き込んだ。仏提案はウクライナの安全を保証するため、欧州主体の部隊を派遣する構想。停戦監視を視野に入れた計画とみられている。
会議終了後、ドイツのショルツ首相はトランプ氏と19日、ウクライナ情勢をめぐり、電話で会談したと明らかにした。首相府声明は国際部隊には触れないまま、「戦争は長引きすぎており、できるだけ早く公正な平和の道に向かうべきだ」という認識で双方が一致したとしている。マクロン氏は同日、仏海外県マヨットのサイクロン被災の視察に向かい、会議は欠席した。
首脳会議声明は、トランプ次期政権への対応や国際部隊には言及しなかった。ロシアによる民間人攻撃を非難し、ウクライナ支援を続けるという従来の方針を確認するにとどまった。
EUのカラス外交安全保障上級代表は会議を前に、英紙フィナンシャル・タイムズに「ウクライナに安全を保証せず、停戦交渉に追い込んではいけない」と述べ、トランプ氏の停戦圧力を牽制(けんせい)した。国際部隊案についても「平和の見込みもないのに、平和維持部隊は論議できない」と否定的な見方を示していた。