秋田県の佐竹敬久知事にロシアのプーチン大統領から平成25(2013)年に贈られた雄のシベリア猫「ミール」が3日、12歳で病死した。一方で、ミールの贈呈に先立って佐竹氏がプーチン氏に贈った雌の秋田犬「ゆめ」は8年間、消息が分かっていない。ロシアのウクライナ侵略で日露の交流が途絶える中、関係者は心配している。
ウクライナ侵略「猫に罪はない」
佐竹氏は平成24(2012)年、東日本大震災で東北地方が受けた支援へのお礼として、秋田犬保存会の協力を得て、愛犬家のプーチン氏にゆめを贈った。プーチン氏は翌年、返礼として佐竹氏にミールを贈った。
佐竹氏は大の猫好きとして知られ、保護した野良猫を知事公舎で飼育。そこにミールが加わり、大事に育てていた。ミールという名前は、ロシア語で「平和」を意味し、佐竹氏が名付けた。
佐竹氏は「ミールは神経質だから」として、受領式以降は撮影などの取材は認めなかったが、県は毎年、猫の日の2月22日に合わせて動画を公開していた。
名前に込めた願いもむなしく2022年、ロシアはウクライナ侵略を開始。だが、佐竹氏は「猫に罪はない」として動画の公開を続けていた。タス通信などロシアのメディアは3日、日本の報道を基にミールの死を伝えた。
「そろそろ寿命、元気でいて」
一方、秋田犬のゆめの様子は2013年4月、ロシア大統領府のホームページで公開された。スポーツウエア姿のプーチン氏がゆめと、ブルガリアから贈られた犬を連れ、雪の中で戯れている様子などの写真20枚が掲載された。
14年2月には、ロシア南部ソチの大統領公邸で行われた日露首脳会談の際、ゆめがプーチン氏と一緒に安倍晋三首相(当時)を出迎えた。
国会で質問された安倍氏はゆめについて、「見た目が結構迫力があったもので、少しこわごわ手を出したところ、ペロッとなめていただいた。プーチン氏が『この犬はたまにかむからね』と言うので、びくっとした」と答弁した。
プーチン氏は16年12月、読売新聞と日本テレビのインタビューに応じた際にゆめを連れて現れたが、その後はゆめの消息は分かっていない。
今年6月、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記がプーチン氏に天然記念物の「豊山犬」のつがいを贈ったと報道されており、プーチン氏の犬好きは変わっていないとみられる。
ゆめはミールと同い年なので、生きていれば12歳だ。ゆめのブリーダーで秋田犬保存会に所属する秋田県大館市の畠山正二さん(81)は「秋田犬の寿命は長くて12~13年。ゆめの母親は13歳まで生きた。ゆめもそろそろ寿命なので、元気かどうか情報がほしい」と話している。