【バクー=小野田雄一】ブラジルで首脳会議を開いた20カ国・地域(G20)は18日に公表した首脳宣言で気候変動対策の重要性を強調した。ただ、宣言は、アゼルバイジャンで開かれている国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)で協議が難航している来年以降の国際的な気候変動対策資金を巡る合意形成を強力に後押しするものとはいいがたく、専門家からは失望の声も上がった。
首脳宣言の公表に先立ち、COP29議長を務めるアゼルバイジャンのババエフ環境・天然資源相は「G20なしで(COP29は)成功できない。世界は彼らの声を聞きたがっている」と述べ、G20が気候変動対策で「前向きなシグナル」を発信するよう要請。国連気候変動枠組み条約のスティル事務局長も、気候変動対策資金を巡る協議の停滞を打開するよう求める書簡をG20に送った。
COP29の主要議題は、地球温暖化抑止に向けて先進国が途上国に拠出する資金(民間投資含む)の来年以降分に関し、現在の年間1千億ドル(約15兆4千億円)からどの程度の上積みで合意できるか。ただ、少なくとも年間1兆ドル規模への増額を求める途上国と、大幅な増額に慎重である上に新興国なども資金拠出に参加すべきだとする先進国の立場が衝突し、協議は大きく進展していない。
COP29の参加各国は、先進国以外も加盟するG20の首脳が指導力を示し、資金拠出を巡る先進国と途上国の溝を埋めることを期待していた。G20は世界の国内総生産(GDP)の約85%を占める一方、温室効果ガス(GHG)排出量でも約75%を占めている。
だが、首脳宣言は資金拠出問題に関し、「COP29で成功裏の結果が出ることを期待する。われわれは交渉の成功を支援する」と記載。資金拠出に関する具体的な提言はなく、COP側に問題解決を「丸投げ」したともいえる形となった。
COP29に出席した日本の複数の専門家は首脳宣言について「停滞する資金協議の突破口を開くものにはならない」と評価。「期待外れ」との声も聞かれた。