【カイロ=佐藤貴生】イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意が発効した19日、パレスチナ自治区ガザに人道支援物資を搬入する動きが本格化した。ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所には物資を積んだトラックが長蛇の列を作った。運転手らは「早くガザの人々に届けたい」などと、入域許可を待ちきれない様子で話した。
産経新聞助手が19日、エジプト政府主催のプレスツアーに参加してラファ検問所を訪れ、取材した。
首都カイロからバスで8時間超走り、検問所の前に到着した。ゲートの前には確認できただけでも150台以上のトラックが並び、みな燃料や毛布、食料、おむつなどを満載していた。
「エジプトの非政府組織(NGO)による支援物資の小麦粉40トンを積んで、10日前から待っている」。検問所の近くで会った運転手のアハメドさん(26)はそう話し、「1年以上も流血の侵略に苦しめられ、困窮しているパレスチナ人に必要な物資を運べることを、エジプト人として誇りに思う」と続けた。
ガザと境界を接するエジプトはイスラム教徒が人口の9割を占め、ガザの人々への同胞意識が強い。イスラエルのガザ攻撃を受け、米国企業の製品に対する不買運動も起きた。
エジプト政府によると、この日は330台のトラックが、ラファからイスラエルの管理するケレムシャローム検問所に向かった。ロイター通信によると、バイデン米大統領は「トラック数百台が市民を助けるためにガザに入った」と述べた。
ガザの人口は推定220万人。報道によると、戦闘期間中には10日間でトラック9台しか入域できないときもあった。国連は一時、必要な物資の9%しか届いていないと推計した。
ガザに向かった運転手は電話取材に、「イスラエルは以前、車体や積載物資をすべて検査していたが、きょうは簡易になっている」と話した。
負傷してエジプトの病院で治療を受けていたというガザ出身のカメラマン、アリさん(30)は「両親と2人の兄弟はイスラエル軍に爆撃されて死亡した。ハマスは今もガザでは人気がある。ハマスに拘束されていた人質の居場所を住民が漏らさなかったことが、それを証明している」と話した。