ロシアのプーチン大統領は28日、欧米諸国が供与した長射程兵器による露国内攻撃をウクライナに容認したことを非難し、ロシアが21日にウクライナ東部ドニプロに発射した新型中距離弾道ミサイル「オレシニク」の標的として今後、ウクライナの「意思決定中枢」を選ぶ可能性があると述べた。プーチン氏は、オレシニクを大量に使用した場合の破壊力が「核兵器に匹敵する」とも強調した。
大統領府の攻撃を示唆
中央アジアの旧ソ連構成国カザフスタンの首都アスタナで開かれた露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)の首脳会議で発言した。プーチン氏はオレシニクでウクライナ大統領府などを攻撃する可能性を警告し、露国内攻撃や抗戦を断念させようとする思惑を鮮明にした。
プーチン氏は、ロシアのミサイル生産量は北大西洋条約機構(NATO)諸国の10倍で、来年は25~30%増産すると指摘。また、第二次大戦の対ドイツ戦勝80周年に当たる来年5月にロシアが行う軍事パレードに各国首脳を招待した。
一方、プーチン氏がカザフに到着した27日、アスタナ中心部の大型LEDスクリーンにウクライナ国旗が表示される「事件」が起きた。カザフ当局は「LEDスクリーンが外国にハッキングされた」と主張。刑事捜査を開始し、実行者の責任を追及するとした。
「勢力圏」で不協和音
CSTOはロシアとベラルーシ、カザフ、タジキスタン、キルギス、アルメニアの6カ国で構成。ロシアは自身の「勢力圏」とみなすCSTO諸国との結束を深め、ウクライナ侵略で敵対するNATOに対抗する方針を進めてきた。ただ、CSTOを巡っては近年、ロシアと他の加盟国の間で不協和音も目立っている。
実際、アルメニアのパシニャン首相は昨年11月の首脳会議に続き今回も欠席した。パシニャン氏は、係争地ナゴルノカラバフを巡る隣国アゼルバイジャンとの紛争でアルメニアを支援しなかったとしてロシアとCSTOを繰り返し非難する一方、欧米との軍事協力を加速。今年2月には「アルメニアはCSTOへの参加を凍結した」「ウクライナ問題でアルメニアはロシアの同盟国ではない」と発言したほか、9月のCSTO合同軍事演習にもアルメニア軍を派遣しなかった。
CSTOに加盟する中央アジア3カ国も、ウクライナ侵略を巡って中立的立場を保ち、ロシアから一定の距離を置く外交を進めている。(小野田雄一)