【ソウル=桜井紀雄】韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は29日、ウクライナを侵略するロシアへの北朝鮮の朝鮮人民軍の派兵に関し、高級将校を含む一部の兵力が既に戦闘の前線に移った可能性があるとの見方を示した。報告を受けた国会議員が記者団に明らかにした。
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は28日、北朝鮮の軍部隊がロシア西部の激戦地、クルスク地域に展開したことを確認したと発表していた。
ウクライナ当局は北朝鮮の兵力約1万2千人が既にロシアに入ったと分析。国情院は当初、北朝鮮の兵力の戦線投入は12月初めごろまでかかるとの見方を示していたが、派兵の動きを韓国などに公表されたことを受け、露朝が移動のペースを引き上げたとみている。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は28日、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長との電話会談で「北朝鮮の軍の戦線投入が予想より早く行われる可能性があり、厳しい状況だ」と説明した。
露朝両国のメディアによると、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外相は29日に露極東ウラジオストクに到着。30日にモスクワを公式訪問する。国情院はロシア側と追加の派兵や派兵に対する見返りなどに関し協議する可能性があると報告した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の訪露が議題になるとの観測も出ている。