【ソウル=桜井紀雄】韓国検察は9日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に「非常戒厳」を進言したとされ、内乱容疑で告発された金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相の逮捕状を請求した。逮捕状は「尹大統領らと共謀して内乱を引き起こした」と明記。尹氏が戒厳の首謀者だと判断したもようだ。今後、尹氏への事情聴取のほか、身柄拘束や関係先への家宅捜索など、強制捜査に踏み切るかが焦点となる。
内乱罪は、①首謀者②謀議に参加、指揮その他の重要任務に従事した者③単純関与者など-の3つに分けて処罰する。韓国メディアは、検察が金氏に「内乱重要任務従事」や職権乱用の容疑を適用し、尹氏を「内乱の首謀者」に位置付けたと報じた。
大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。法務省は9日、政府高官の不正を独立して捜査する「高位公職者犯罪捜査処」(公捜処)などからの要請を受け、尹氏を出国禁止とした。
金氏は憲法に反する戒厳を尹氏に進言し、国会や中央選挙管理委員会に軍部隊を投入するよう部下に指示した疑いが持たれている。ソウル中央地裁が10日、金氏の逮捕状発布の可否を判断する。
聯合ニュースによると、金氏は検察の取り調べに対し、尹氏に戒厳を進言したことや国会などへの軍投入を指示したことを認めたものの、「違憲、違法性はなかった」などと供述しているという。金氏は尹氏と同じ高校出身の最側近だった。
尹氏への内乱容疑を別途捜査する警察は8日、金氏の自宅や執務室などを家宅捜索した。検察と警察、公捜処がそれぞれ捜査の主導権を争う状況となっている。