【ロンドン=黒瀬悦成】英非営利調査機関「オープンソース・センター」は22日、ロシアが北朝鮮に対し、ウクライナ侵略への支援の見返りとして過去8カ月間に100万バレルを超える石油を供給していたことが衛星画像の分析で明らかになったと発表した。
北朝鮮への石油輸出は国連安全保障理事会決議で実質的に禁止されており、ロシアがウクライナ戦争を継続させるため北朝鮮への依存を一層強めている実態が浮き彫りとなった。
同センターによると、今年3月7日から11月5日にかけて、北朝鮮の石油タンカー十数隻がロシア極東ボストチヌイの貯油施設に計43回寄港していることが衛星画像で確認された。
また、問題のタンカーを洋上で撮影した画像では、ロシアに向かっているときよりも北朝鮮に戻っているときの方が船体が深く沈んでおり、石油をほぼ満載した状態で出港していると推定されるとした。
タンカーは航行中、他の船舶に位置を知らせるトランスポンダー(自動応答装置)を切って居場所を分からなくしていたという。
同センターによると、引き渡された石油は北朝鮮からロシアへの兵器の供給や軍部隊の派遣に対する見返りだったとみられる。
北朝鮮が年間に輸入できる石油精製品の上限は国連安保理決議で50万バレルに制限されている。
北朝鮮の石油消費量は年間900万バレルとされ、北朝鮮は需要を賄うため、洋上で船から船へ石油を積み替える「瀬取り」などの違法な手段で原油の密輸入を展開してきた。
ロシアから北朝鮮への石油供給は、北朝鮮の支援ががロシアの戦争継続に不可欠になったのと同時に、北朝鮮もロシアから提供される石油を自国の生命線とし、両国が持ちつ持たれつの関係になっている実情を示すものでもある。