【ソウル=桜井紀雄】韓国で弾劾訴追を受けた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を弁護する石東炫(ソク・トンヒョン)弁護士が19日、記者団の取材に応じ、国会などに兵力を投入した非常戒厳は内乱罪に当たらないと改めて主張した。捜査機関は尹氏を戒厳の首謀者とみて内乱容疑で捜査している。
石氏は、尹氏が国会議員を狙って「逮捕せよ」と言及したことはないとも説明。軍や警察には「市民と衝突してはならない」との趣旨の指示を出したと反論した。
戒厳を巡っては、国会などに投入された軍部隊を指揮して逮捕された司令官らが、尹氏から「扉を壊して議員らを引きずり出せ」と電話で指示されたなどと証言している。この証言通りなら、戒厳解除を求める国会決議を妨害した違憲行為となる。証言と相反する尹氏側の主張は、憲法裁判所での尹氏の弾劾審判や捜査当局による捜査でも大きな焦点となりそうだ。
石氏は、尹氏がテレビ中継で戒厳を発表したことを挙げ、国民や世界に向けて「『私は内乱を起こします』と言って起こす内乱がどこにあり、2~3時間で国会がやめろと言ってやめる内乱がどこにあるのか」と反論した。戒厳は個人的な不満からではなく、野党によって行政が麻痺(まひ)する中、尹氏が「本当に国家の非常事態だ」と判断したものだと主張した。石氏は尹氏とソウル大法学部の同期生で40年来の親交がある。