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韓国女性作家のノーベル賞受賞 翻訳支援など官民挙げての売り込み成果 作品自体も面白い ソウルからヨボセヨ

産経ニュース 2024年10月12日 7時0分

女性作家、韓江(ハン・ガン)氏のノーベル文学賞受賞に韓国は国を挙げて歓喜している。彼女が国際的に注目されるようになったのは2016年、小説「菜食主義者」が英国の権威ある文学賞ブッカー賞を受賞してからだ。当時、この小説を読んだ筆者の感想は「これは傑作である」だった。

このことは拙著「韓(から)めし政治学」(角川新書 2019年刊)でも書いたが、小説の女主人公は幼い時に無理やり父にイヌ肉を食わされたトラウマから肉食拒否の菜食主義者になり、最後は心を病んで毎日、病棟の外で裸になって日光を浴び、木になろうとする。つまり動物はもちろん植物も命ある存在だから他の生命を犠牲にせず生きるためには、木になるしかないではないかというのだ。

菜食主義の偽善(?)を皮肉っていてすごい哲学的な発想が印象的だったが、結果的にはイヌ肉食という韓国の食文化批判にもなっていた。その後、小説は韓国でベストセラーになり、イヌ肉禁止の世論に寄与したというのが拙著での紹介のオチだった。

受賞の背景には韓国の〝文化力〟の拡大があり、翻訳支援など官民挙げて韓国文学を海外に売り込んできた成果でもあるが、やはり「菜食主義者」のように作品の中身に広がりがあり面白くなったことが一番の背景だろう。(黒田勝弘)

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