【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は21日、憲法裁判所で開かれた自身の罷免の可否を決める弾劾審判の弁論に初めて出廷した。尹氏は「非常戒厳」の宣布後に国会に軍部隊を投入し、議員らが戒厳解除要求決議を可決するのを阻むよう指示したとされる疑惑を全面的に否認した。
尹氏側弁護士も、全ての政治活動を禁じるとした戒厳布告令について「形式的なもので、実際に執行する意思はなく、(尹氏が)政治家の拘束を指示した事実もない」と違憲行為を否定した。
尹氏が昨年12月の戒厳以降、映像談話の発表などを除き、公の場に姿を見せるのは初めて。弾劾訴追された大統領が弾劾審判に出廷するのも初めてだ。スーツにネクタイ姿の尹氏は冒頭、「自由民主主義という信念一つを持って生きてきた」とし、判事らに「しっかり調べてくれることをお願いする」と述べた。
司令官らが「国会議員らを議場から引きずり出せ」と尹氏から直接指示されたと供述していることを巡り、判事が「指示したことはあるか」と質問したのに対し、尹氏は「ない」と答弁した。
不正選挙疑惑の証拠を得るため、中央選挙管理委員会に部隊を派遣したとされることについて、尹氏は「選挙の公正性」への疑問点が多く、「システム全般を点検」するのが目的で、不正選挙に絡む陰謀論を提起したものではないと説明した。