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ノーベル賞ゼロ続いた韓国が歓喜「国家的な慶事」 文学賞の韓江さん、社会対立の渦中にも

産経ニュース 2024年10月10日 22時50分

【ソウル=桜井紀雄】ノーベル平和賞を除いて長く自国からのノーベル賞受賞者がいなかった韓国では、韓国人女性作家、韓江(ハン・ガン)さんのノーベル文学賞受賞決定を大きな驚きと歓喜をもって受け止めた。

「韓国からノーベル文学賞受賞者が出るとは思いもしなかった」。韓国の通信社は10日夜、受賞の一報に驚く市民らの声を伝えた。

韓国では毎年、この時期は米国籍者も含めて28人の受賞者を輩出した隣国の日本と対比し、「なぜわれわれは受賞できないのか」といった分析記事が並ぶことが多かった。今年は自然科学分野でも有力な韓国人受賞候補者の名前は挙がらず、受賞に悲観的な空気が強かった。

特に韓国の文学界では、ノーベル文学賞の有力候補とされてきた詩人の高銀(コ・ウン)氏(91)に2017~18年にセクハラ疑惑が持ち上がったこともあり、韓国人の受賞の可能性が遠のいたともみられていた。

一方で、韓江さんは16年に英ブッカー国際賞をアジアの作家として初めて受賞し、世界的な注目は高まっていた。

韓国内で韓江さんは保革対立の渦中にも置かれた。軍が民主化運動を弾圧した1980年の光州事件を扱った小説「少年が来る」は革新系の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の愛読書とされた一方、保守系の朴槿恵(パク・クネ)元政権下では、政権に批判的な芸術家として「ブラックリスト」に名前が記載されたとされる。

今回、韓江さんの作品の普遍的な価値が認められたことを受け、ラオス訪問中の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も即座にSNSに「韓国の文学史上の偉大な業績であり、全国民が喜ぶ国家的な慶事だ」と受賞をたたえるコメントを掲載した。

韓江さんの作品を求め、夜間の書店に駆け付ける人も見られ、オンラインでの注文も殺到している。韓国はしばらく韓さんフィーバーに沸き返りそうだ。

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