【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮メディアは26日、同国のミサイル総局が25日に戦略巡航ミサイルの発射実験を行い、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が視察したと伝えた。20日のトランプ米大統領の就任後、北朝鮮によるミサイル発射は初めて。金氏は北朝鮮の「戦争抑止手段は一層徹底的に完備されつつある」と強調した。
一方、北朝鮮外務省の対外報道室長は26日、米韓両空軍による合同訓練に反発する談話を発表。米国が北朝鮮の主権や安全を脅かす以上、「徹頭徹尾、超強硬で対応すべきで、これだけが米国を相手にする上で最上の選択だ」と主張した。
金氏は今年の政策方針を決める昨年末の党の重要会議で、米国に「最も強硬な対応戦略」を取ると表明していた。トランプ氏は1期目に金氏と築いた友好関係を誇示し、金氏との再度の接触に意欲を示したが、北朝鮮は核・ミサイル戦力強化に基づく強硬路線で当面、トランプ政権に対応していく構えのようだ。
半面、談話は、米韓の「軍事的挑発」の動向を注視しているとも指摘。トランプ氏が1期目同様に米韓の大規模演習の中止に再び踏み切るか見定める思惑もありそうだ。
北朝鮮が25日に発射実験を行った巡航ミサイルは水中から発射が可能なタイプで、複数のミサイルが2時間余り、楕円(だえん)や「8」の字形の軌道で1500キロ飛行し、標的に命中したとしている。
巡航ミサイルは、低空を変則的に飛行でき、レーダーに捕捉されにくい。発射は、国連安全保障理事会決議違反に当たらないものの、北朝鮮から1500キロなら日本のほぼ全域を射程に収め、日本への脅威となる。