韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案は7日夕に採決され、可決の可能性がある。尹政権と対立する左派政権の発足も見込まれる中、朝鮮半島情勢に詳しい麗澤大学客員教授の西岡力氏は、「日韓関係の悪化は避けられない。内政が滞るたびに反日感情を利用して政権浮上を図るような、かつての文在寅(ムン・ジェイン)政権のような状況の再来がありうる」と指摘する。
韓国では、次の大統領に革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の就任が有力視されている。
西岡氏は、李氏が自著で「地政学的に大陸勢力(中国、ロシア)と海洋勢力(米国、日本)が衝突する半島に位置する私たちの国は、自主的で均衡のとれた外交を展開しなければならない」などと訴えていたことを挙げ「この立場に基づき、どの国とも一定の距離を保った外交を展開するのではないか」と指摘。その上で、「同じ左派政権の文政権がそうだったように、ひとたび国内経済の悪化などがあれば、支持率向上のために反日感情も適宜、利用するだろう」との見方を示す。
親北政権、北は「やっかい」
関係が悪化している北朝鮮については、「改善に向け、南北首脳会談の打診などをするだろう」と分析する。ただ、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は昨年末から、「韓国とは同族関係ではなく敵対的な国家関係」との主張を展開しており、会談実現の見込みは薄いとみる。
北朝鮮は、ドラマや音楽などの韓国文化に自国民が感化されることを極端に嫌がっており、西岡氏は「親北的な姿勢をとる政権の誕生で、そうした情報がより多く北朝鮮に流入してくる可能性があり、むしろやっかいと考えるかもしれない」と語る。
拉致問題への影響「ほぼない」
北朝鮮による日本人拉致問題への影響については、「もともと、日本は韓国を頼りにしていたわけではない」として、影響はほとんどないとの見方を示した。
尹氏に対する弾劾訴追案は、7日夕に国会で採決される予定だ。今後の与党議員の動向にもよるが、可決されれば大統領の職務が停止し、憲法裁判所が180日以内に罷免するかどうかを判断する。罷免されれば、60日以内に大統領選が実施される。(中村翔樹)