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韓国流出の高級ブドウ「ルビーロマン」、石川県「徹底的に戦う」 商標登録で巻き返しへ

産経ニュース 2024年7月23日 12時0分

石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」と同じ名称のブドウが、韓国国内で流通している。ルビーロマンは開発に14年の歳月を費やし、県内農家が厳格な出荷基準を守ってきたブランド農産物。一方の韓国産は糖度18度以上など日本の基準を満たしていないなど、ブランドイメージは毀損(きそん)されかねない。県は、韓国でルビーロマンを商標登録することで韓国内での栽培・販売行為に法的措置を講じていく構えだ。商標登録の障壁となっている、韓国企業による「ルビーロマン」の「品種名称登録」の取り消しを申請するなど、対応に本腰を入れている。

苗木の流出防止の徹底も

「徹底的に守ります。そして徹底的に戦います」

石川県の馳浩知事は今月18日の記者会見で、ルビーロマンが韓国などで生産・販売されている事態について、全力で対応する考えを示した。

ルビーロマンは県農業総合研究センター砂丘地農業試験場が1994年に開発に着手し、2007年3月に品種登録された。1房1万円以上で販売され、今月19日に金沢市中央卸売市場で行われた初競りでは1房100万円の値をつけた。33粒付いており、1粒換算では約3万円に達する。史上最高値は、昨年の初競りでつけた1房160万円だ。

ルビーロマンを栽培できるのは県内農家のみ。栽培する農家は、苗木の譲渡禁止や栽培を止めた際の苗木の返却・処分を義務付ける契約を県とそれぞれ交わしている。そうした状況にもかかわらず、韓国で「ルビーロマン」が栽培、販売されているといった情報が21年8月、県に寄せられた。現地で確認すると「ルビーロマン」と称するブドウが複数箇所で販売されていた。県は一部を持ち帰って、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)でDNA鑑定した結果、22年8月にルビーロマンと遺伝子型も一致した。何らかの経路で韓国に苗木が流出したとみられる。

ロイヤルティー払う必要なし

韓国・毎日経済新聞(日本語電子版)は21年8月、ルビーロマンについて「最近国内のデパートの一部店舗で限定販売された。シャインマスカットに続く高級ブドウとして関心を集めている」などと報じ、韓国の農村振興庁関係者の「両方のブドウとも韓国に海外品種出願をしていない。日本にロイヤルティー(権利者に報酬)を支払う必要はない」とするコメントを紹介した。石川県の努力の結晶ともいえる果実の利用を正当化した形だ。

21年4月に施行された改正種苗法でルビーロマンを含む農作物の種や苗を海外に不正に持ち出すことは禁じられたが、苗木の接ぎ木から収穫まで数年かかる。韓国に苗木が持ち出されたのはど改正法は施行される前とみられる。

とはいえ、県も黙って見過ごすわけにはいかない。22年10月に韓国の特許庁に「Ruby Roman」の商標を出願。商標を取得して、韓国の販売事業者に対し、販売を差し止める法的措置を講じる狙いがあった。ただ、同国の商標法では、植物新品種保護法で登録された品種名称と類似した商標について受理することはできない。「ルビーロマン」の品種名称は種苗会社とみられる韓国企業が出願し、21年2月に登録されていた。韓国特許庁は今年1月、県に対しこうした「拒絶理由」を通知した。

48カ国・地域で商標出願

一方、拒絶理由を解消すれば、商標登録に道が開ける。県は6月末に拒絶理由の内容について反論する意見書を韓国の特許庁に提出し、今月5日付で品種登録を所管する韓国の国立種子院に対し「ルビーロマン」の品種名称登録の取り消しを申請した。農林水産省関係者によれば、こうした自治体による措置は前例がないとみられ、「石川県にとって『ルビーロマン』は県を代表する品種で、県民の思いを背負ってあらゆる対応をとっていくのだろう」と語る。

ルビーロマンの商標は県に先駆けて韓国で登録されているが、県は取得先に対し、商標権について譲渡交渉する構えだ。韓国特許庁は8日、県に対して審査を猶予する通知を出した。

ルビーロマンは出荷者や生産者によって、粒の大きさが20グラム以上、糖度は18度以上など厳格に定められている。一方、韓国の「ルビーロマン」は日本の出荷基準を満たしていない。〝規格外商品〟が流通すればブランド価値を損なう結果になる。

県の担当者は「韓国に輸出していく際に商標がちゃんと使えるようにする面に加え、不正に使われているのを止めさせる面がある」と述べ、商標登録の必要性を強調する。

県はルビーロマンのブランド価値を守るため、東南アジアなど計48カ国・地域に商標を出願しており、台湾や香港では商標を取得している。(奥原慎平)

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