Infoseek 楽天

仏像盗難の対馬・観音寺「また、だまされるかも…」 韓国の寺の〝条件〟付き返還承諾に

産経ニュース 2024年9月25日 13時32分

長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に持ち込まれた仏像を巡り、所有権を主張していた韓国・浮石寺(プソクサ)が日本への返還に反対しない考えを示したと報じられている。仏像は2012年10月に韓国人窃盗団が盗み出し、韓国最高裁は昨年10月、観音寺に所有権を認める判決を確定していた。ただ、浮石寺側は返還を前に仏像の「100日法要」の実施など〝条件〟を挙げているという。これまで韓国側の理不尽な対応に悩まされ続けてきた観音寺側は韓国側と交渉する上で日本の有力な政治家の後ろ盾を求めている。

「半分しか信じられない。10年間、だまされてきた。また、だまされるかもしれない」

観音寺の前住職、田中節孝さんは25日、浮石寺が返還に反対しない考えを示したことについて、慎重にこう語った。

仏像は長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」。韓国国内で2013年に窃盗団から回収されたが、浮石寺が数百年前に倭寇に略奪されたものとして所有権を主張。同寺への引き渡しを求めて韓国で裁判を起こしたが、23年10月26日に最高裁で敗訴した。

ただ、仏像はその後、韓国・大田の国立文化財研究所に保管されたままといい、返還に向けた動きは見えなかった。

日韓の関係者によると、今回、浮石寺が返還に反対しない考えを示したのは、韓国の政界筋が調整を試みたためという。日韓国交正常化60年を来年に控えた動きで、韓国の保守系与党「国民の力」の重鎮が働きかけたとみられる。

一方、浮石寺は仏像の安寧を祈る「法要」を同寺で執り行うことを求めている。仏像が浮石寺に運ばれ、法要を終えた後、「約束」の中身が変遷する可能性も否定できない。

観音寺も、浮石寺と交渉する上で、韓国の政界筋を通じて日韓関係に詳しい日本の政治家の仲介を求めている。

田中さんは浮石寺が掲げる「法要」の条件について「今更観音様の情に訴えられても…」と戸惑い、「仏像は韓国の司法判断が下っても、返されなかった。(浮石寺に)有力な議員がいるならば、それと同格の日本の議員に対して、返還の約束をしてほしい。そうでないとほごにされる可能性がある」と語っている。

対馬市議会は26日、仏像について「対馬市の財産で、市民の心のよりどころ」として、早期返還を韓国政府関係者に強く求める決議案を採択する。決議は駐日韓国大使らに送付する予定。(奥原慎平)

この記事の関連ニュース