【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮メディアは29日、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が「核物質生産基地」と「核兵器研究所」を視察したと伝えた。多数の遠心分離機が並ぶウラン濃縮施設の写真も公開した。金氏は2021年からの国防5カ年計画の最終年となる今年、自国の「核の盾を強化する上で画期的な成果を成し遂げるべきだ」と核兵器の増産を強調した。
金氏は米国を念頭に「敵対国との長期的な対決が避けられない」と指摘。「敵を制圧できる絶対的な力は、宣言やスローガンではなく、物理的な力の蓄積と幾何級数的な増加だ」と主張した。
金氏は昨年9月も同様の核施設を視察している。トランプ米大統領が北朝鮮を「核保有国」と表現し、金氏との対話に意欲を示す中、北朝鮮は核兵器開発で譲歩しないとの姿勢を誇示し、トランプ政権の出方を探る狙いがありそうだ。
金氏の視察には、核兵器開発の中心人物とされる洪承武(ホン・スンム)党第1副部長が同行した。北朝鮮のウラン濃縮施設は北西部の寧辺(ニョンビョン)のほか、平壌近郊の降仙(カンソン)に秘密施設があるとされる。昨年9月は降仙を訪れたとみられるが、今回は別の施設を視察した可能性も指摘されている。